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Vic Gohのフォトアルバム Vol-8
2004年4月1日
郷 勝哉


 

まえがき

前回に引き続きオーロラシリーズ 2 をお届けします。前回同様、撮影者名が書いてない写真は郷の撮影です。
チェナ温泉に泊まった第3夜は、右の写真の様な2両連結の雪上列車でホテルの裏山へ登りました。なだらかでかなり広い山頂には写真(速水さん撮影)の様に蒙古のパオスタイルの大型円形テントが設営してあり、外の簡易トイレまでガス暖房してあるのはさすがアメリカでした。外は文字通り漆黒の闇で、目を凝らしてみると、周囲は似たような形の山また山に囲まれているものの、高さが同じくらいなので、視界を遮るような邪魔は一切無く、ガイドの話では360度視界が開けていて見晴らしが良いだけでなく、ホテルのある谷間より暗くて風も少なく、オーロラを見るにはベストの場所とのことでした。

 


  この夜テントの外は多分零下20度以下だったと思いますが、料金 $65.00 を取るだけあり、中では大きな鍋にお湯が沸かしてあって、コーヒー、紅茶、スープは無料サービスで(インスタントラーメンだけはどういう訳か1ドル)なかなか快適でした。

ここでストーブを囲みながら待つこと2時間あまり、真夜中の12:00頃待望のオーロラが出ました。
 


  (速水さん撮影)このように扇型に広がって見えるのは、カーテン状のオーロラがほぼ頭上にある場合で、圧倒的迫力があります。  



これも殆ど真上にある時のもので、見上げていると首が疲れるので地面に寝転がって見ることになります。


  これも山頂での撮影で、カーテン状のオーロラが折り返している部分です。
 



  (速水さん撮影)この写真のようにオーロラカーテンの下の縁が明るくなっている例がよく見られますが、高度の低いところでは、原因となる大気中のガスの密度が濃いためと考えられます。

ところで前回お話しした「昼頃まで寝ていた」後の昼間の過ごし方として、短距離ですが温泉プールがありました。右の写真がその建物です。


  高気圧のお陰でお天気が良いときは厳しい寒さになります。温度計が零下20度を指していますが、これは F すなわち華氏で、内側の摂氏のスケールをよく見ると零下28度です。この日は滞在中の昼間の温度としては最低でした。
こういう日は温泉プールで泳ぐか、野天風呂(右の写真)で過ごすに限ります。野天風呂は脱いでから風呂まで、この寒さの中を歩くのに勇気が要りましたが(通路が凍っていて滑るため駈けるのは禁物)、寒いのも歩いている間だけで、雪や氷に囲まれてアラスカの青空を見上げるのは爽快でした。
 


  もう一つの娯楽がこの写真の犬ぞりで、12頭立てで大人6人ぐらい乗った橇を楽々引っ張るのには驚きました。速度は自転車ぐらいでしたが、顔に当たる風が冷たく鼻水が出てくる始末でした。なお、この犬たちは走るのが大好きだそうで、私たちが乗るときも早く走り出そうとうずうずしていました。  



  速水さんが撮影したとても明るいオーロラで、右下に雪の山が見えています。  


オーロラメモ その2 (その1, 1-5からの続き)

6. フェアバンクスへのアクセス

直行便など無かった昔、ニューヨークやロンドン、ロスアンゼルスに出張した人はJALやSASだとアンカレッジに、PANAM だとフェアバンクスに給油のため一度着陸し、その間にうどんなど食べた思い出のある人も多いと思いますが、今は日本からアラスカへの直行便は皆無で、ノースウェストで一度西海岸のシアトルかポートランドに飛び、そこからアンカレッジまでアラスカ航空で東京シアトルの距離の3分の1ぐらいの距離を戻り、更に北へアラスカ山脈を越えて フェアバンクスに行くルートしかありません。従って日本から距離は近いものの、時間だけはかなりかかります。(韓国のソウルからだと直行便あり)

−−以下は専門的(カメラマニア向き?)な説明もあるので、関心の無い方は読み飛ばして下さい−−

7.オーロラは何故光るか?

高度100km以上では、大気の主成分の窒素と酸素の分子や原子が荷電粒子として自由運動するプラズマ状態になっています。一方地球には、太陽のコロナ部分から飛来する太陽風(成分は水素やヘリュームの荷電粒子)が秒速450kmで飛来していますが、それが地球の磁気圏に突入し磁力線を切ることで高電圧が発生します。この高電圧によりプラズマ状態になっている窒素と酸素がガス放電し、発光すると説明されています。解りやすく言えば、オーロラは大空にかかったプラズマテレビのようなもの、と言えそうです。

8.何故北緯及び南緯65度付近でしか見られないのか?

地磁気による磁力線の分布がリンゴの表面のような形をしていて、そのため地球上の生物は有害な放射線から護られている、ということを聞いたことがあると思いますが、そのリンゴの芯の近く、すなわち地球の南北磁極付近では磁力線の分布が漏斗の様にすぼまっているので、太陽風がそれに沿って渦を巻きながら磁極に向かって落ち込むエリアが65度付近と説明されています。

9.オーロラの色の原因は? 肉眼と写真との違いは?

高度 200−300km では 酸素が赤色に、100-200km では酸素が緑色、窒素が紫、100km 付近では窒素がピンクにそれぞれプラズマ発光するとのことですが、色によっては輝度が極めて弱いため、肉眼では青白くしか見えないのが普通のようで、特に赤は滅多に見られないと言われています。

一方、前回説明したように写真に撮ってみると、肉眼では見えていなかった紫や赤が写り極めてカラフルな画像が得られます。また、多分フィルムの感光特性で違うのではと思いますが、オーロラの輝度が高い部分や長時間露出をした写真では緑が強く出るようです。もっとややこしいのは、フィルムから印画紙にプリントするとき、印画紙の特性や露光時間によりまた色が変わることで、DPショップにプリントを依頼するとき、「背景の空が真っ黒になるように」と指定しないと、おかしなプリントが出来てしまいます。その点ではスライドフィルムの方が忠実と言えます。

10.カメラとフィルムは何が適しているか?

10秒以上の露出が必要なため、シャッターにバルブ(手動で開閉する機能)が付いているもの、また三脚も必須でバルブ操作用レリーズもあった方がベターです。これらの点でシャッターが全自動のコンパクトカメラでは、よほど明るいオーロラ以外は無理でしょう。この時持参したキャノンのコンパクトカメラ(ASA400 フィルム)でも薄ぼんやりとは写りましたが。

レンズは 22mm など出来るだけ広角が推奨で、オーロラの広がりを良く捉えるだけでなく、地上の景色も入り味のある写真になります。レンズの明るさは 2.0 など、明るいほど露出時間が少なくて済みます。オーロラが静止している現象なら、暗いレンズでも長時間露出すればカバーできるのですが、絶えず動いているため、長くなる分ぼけてしまいます。今回はそれほど激しい動きは見られませんでしたが、太陽活動の激しい時期ではオーロラが乱舞する「爆発現象」というのがあり、そうなるとムービーでないと間に合わないかもしれません。(放送用高感度カメラ並の性能が要りそうですが)

デジカメのことは良く知りませんが、CCDそのものは、フィルムより高感度の素子として天体望遠鏡撮影にも使われる様になったので、バルブが付いたメガピクセル級の高級機種ならなら使えそうです。
フィルムは ASA3200 など超高感度フィルムまで市販されていますが、高価なだけでなく、感度が高くなるほど粒子荒れが出る理屈であり、またカメラが夜間専用になってしまい昼間の撮影には不便なので私は ASA800 フィルムで我慢?しました。また超高感度フィルムは空港のセキュリティーチェックで劣化してしまう怖れがあります。私は用心してX線検査を通さずフィルムだけ分けて「目視検査」をして貰いました。

11.カメラの保温対策

極寒では一眼レフカメラのミラーが動かなくなるとか、フォーカルプレーンシャッターが重くなるとよく言われ、私もこの時ミラーが上がりっ放しで降りなくなる経験をしました。昔のレンズシャッター付レチナを余分に持っていったのもその理由でしたが、この辺の所はカメラによって大分違うようで、「保温について何もしなかったが平気だった」という話もあります。

カメラメーカーに問い合わせると「グリースを耐寒用に変更しない限り保証できない」といわれてしまいます。それで一般的には保温することになるのですが、旅行前に「ホカロンの類は利かない」と聞いていたので登山用の固形燃料懐炉を持っていったのですが、最初の着火が不充分だったのか、立ち消えで失敗したのは前回書きました。 ところが現地で雪上車の運転兼ガイドが「日本人が帰りがけにくれるものがあり、それがとても具合が良い」と言うので「何だ」と見せて貰ったら何と駄目なはずのホカロンで、それをレンズの回りやボディの回りにべたべた貼りつけていました。

後からホカロンのメーカーに問い合わせたりして解ったことは、ホカロンには化学反応を促進するため水を含ませてあり、それを氷らせてしまうと全く発熱せず、これが「利かない」理由で、あらかじめ零度以上の室内などで裏紙を剥がし発熱を確かめてから使うのがコツでした。

一方ホカロンや懐炉で対策したカメラを温かい室内に放置すると、熱くなり過ぎフィルムを痛める怖れがあるのと寒さに慣らすためでしょうか、皆さんオーロラ出現まで三脚に載せた状態で屋外に放置していましたが、私は真似して冷やしすぎ失敗でした。一般的に手で触って我慢できる温度が60度と言われるので、これを目安に「熱過ぎず、冷やし過ぎもせず」に保つ必要があります。またホカロンを貼ったカメラを、撮影する時以外できるだけ懐に入れておくことも適度な保温対策になります。

12.カメラの結露対策

寒い屋外から温かい室内にカメラを持ち込むと、当然の事ながら結露します。
これがレンズやカメラの外部だけなら拭けば済むことですが、内部だと厄介でレンズの内側が曇ってしまう自然に乾くまで写せなくなるし、もっと怖いのは次ぎに室外に持ち出したとき、内部の結露が氷りシャッターやその他のメカを壊す怖れがあることです。(真偽はともかく、ものの本にはそう書いてあります)これを防ぐために室内に持ち込む時はビニール袋に入れ、脱いだ防寒着などでくるんでゆっくり暖まる様にします。

13.カメラの操作

レンズは絞り開放、距離無限大にしたまま3脚にセットし、1眼レフではファインダーを覗いても暗くて細部はよく見えないので、目見当でオーロラの方向に向け、露出時間は暗闇の中で数を数えて決めるということになります。設定には懐中電灯も使いますが、露光中はその光が入ってしまう怖れがあり、暗闇に目を慣らした他の人の迷惑にもなるのでやたらに点灯するわけにはいきません。

14.オーロラ撮影について究極のアドバイス?

以上いろいろ撮影ノウハウを書きましたが、2度目、3度目は別として、初めての時はオーロラの写真は撮らないというのも一つの選択です。というのも、良い写真を撮るには以上のようにいろいろ厄介な問題があり、それにかまけ過ぎると、初めて見るオーロラの感動が薄れてしまいかねないからです。実は私も行く前からこの辺の懸念があり、「まず眼でしっかり見よう、写真は二の次ぎに」と自分に言い聞かせたものです。

撮影データ

前回と同じなのでそちらを参照して下さい

以上

 
 
Photographs copyrighted (2003〜2004, Vic Goh)
 
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