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Vic Gohのフォトアルバム Vol-36
ロッキー山系の風物 その1(ロッキーの機関車)

2007年2月1日
郷 勝哉
このフォトアルバムは過去数十年間に撮り溜めた写真の中から、丁度古いアルバムをめくるように往時を思い出しながら選んだ写真回顧録です。山や湖、オーロラなど自然の風物が主になるはずでしたが、結果的に飛行機、鉄道、車など乗り物も多く出ました。このあたり、子供の頃好きになったものが染みついていて何かと顔を出すようです。今後もこの様なコンテンツで続くと思いますが、変わらずお付き合い頂ければ幸いです。なお、Windows の画面設定を800 x 600にすると写真を大きくして見ることができます。(2005-12-1)

<まえがき>
昨年孫達が住んでいるコロラドを訪問し、帰途シアトルとその近郊の Mount Rainier 国立公園などに立寄りました。今回はその旅行中に遭遇した昔の機関車の写真をめぐり、それぞれ特徴のある駆動メカニズムについて調べてみました。



<Klamath Falls のSL>
オレゴン州の南の方に Crater Lakeという、地形が北海道の摩周湖によく似た湖の国立公園があります。ロスアンゼルス駐在時にこの公園を訪問したとき、近くのKlamath Falls という町に泊まりましたが、その公園にこのSLが説明もなく無造作に置いてありました。最近調べた所、1906年 Baldwin 社の製造で車輪配置は 2-8-0 (先輪2、動輪8、從輪0--左右合計)でSouthern Pacific Railway で使われていたものと解りました。この大きさで從輪0は珍しいのですが、替わりに後ろの炭水車の台車が運転室の下まで入り込んでいて從輪の役をしているようです。 なお立っている子供は1976年の撮影当時10才だった息子です。



<Pikes Peak 登山用アプト式SL>
この写真は萩原さんのコロラド便り4 に提供したことがありますが、コロラド州の Pikes Peak 4,301 m に登る登山列車用のSLでレール中央のラックギアとかみ合って走るアプト式です。写真ではボディが水平に見えますが下の車輪をよく見るとレール面に対しボディ全体が前に傾いているのが解ります。 これは急勾配でボイラー内の水が偏り空焚きになるのを防ぐ為で、通常客車1両を前に連結し、登るときは押し上げ、下るときはそのままバックすることで連結が外れて客車だけが暴走するのを防いでいます。

製造はBaldwin 社で、19世紀の1893年です。面白いのは写真で解る様に普通なら片側に1個あるシリンダーがこのSLでは大小2個並列に設けられ、その2個のピストンが1本のロッドにまとめられて動輪を駆動しています。これは登山用に強力なトルクを発生するのに、シリンダーとピストンの径を大きくする替わりに2個にして対応したのでしょう。車輪配置は通常の小型SLと逆の先輪無し從輪ありの0-4-2で、これは前述の様に客車はいつも前に繋ぐ走り方をするからでしょう。

なお、同じ様なボディ前傾のSLをフォトアルバム Vol-2 (オーストリア) でもご紹介しました。



<Keystone の4 シリンダー SL>
ロッキー山系からは外れていますが、 South Dakota 州 Keystone の 観光鉄道 Black Hills Central Railroad を走っている長大なSLです。車輪配置は 2-6-6-2で、合計12の動輪は前後6輪ずつに分けられ、それに合わせて前後タンデムに2対、合計4組のシリンダー/ピストンで駆動しているのが特長です。 製造は1928年 Baldwin Locomotive Works で最初は木材会社の貨物用に作られました。



<Rio Grande Western Railway のSL>
Colorado 州のほぼ中央にRoyal Gorge と呼ばれる峡谷があり、世界1高い吊り橋がかかっていて有名ですが、その吊り橋のたもとに展示してあったSLです。テンダー(炭水車)に書かれている Rio Grande を頼りに調べた所、1930-1970年にUtah 州のOgden と Colorado 州 Grand Junction を結んでいたRio Grande Western 鉄道のSLで、車輪配置は 2-8-2、製造は1908年 Baldwin Locomotive Worksと解りました。 ここを薦めてくれた萩原さんと一緒にRoyal Gorgeの渓谷を走る観光列車にも乗りましたが、その時の写真は次の機会にご紹介します。



<Georgetown の Shay式 SL>
元々材木業だったEphraim Shay (1839-1916) という人が、急勾配、急カーブを走る森林鉄道用に設計し特許を取ったギアドライブ方式SLで、発明者の名を取ってこの形式をShay式と呼んでいます。

次の写真でそのユニークな駆動部分が良く解りますが、車両の右側(のみ)に縦に3個設けられたシリンダーがクランクを介してレールに平行な駆動軸を回転し、更にベベルギアで直角に方向を変えて動輪を駆動します。動輪は急カーブを曲がるため小径で現代の電車の様に2軸1組の台車に設けられ、車台に対して回転する様になっています。台車がカーブしたレールに沿って回るにつれて駆動軸は延び縮みしたり折れ曲がる必要がありますが、そのために断面が4角のスプライン構造と丸いユニバーサルジョイントを備えている事が解ります。驚いた事にこの動力台車は全部で3台あり最後部は炭水車の下にあります。

このように動輪を3台の台車に分けたのは、レールに対する負荷重量を分散し且つ合計接地面積を稼ぐためですが、これは今の新幹線車両と同じ設計思想が1900年頃既にあったということになります。
この写真のSLはColorado 州Georgetown の公園に展示されていたもので、1922年 Lima Locomotive Worksという会社の製作と解りましたが、当時最も進んだ機械技術を駆使したメカと言えそうです。Shay式 SLは、戦前日本領だった台湾でも使われ今でも観光列車として活動している様です。




<Mount Rainier Scenic Railroad>
Washington 州 Seattle の南にあるMount Rainier National Park へ向かう途中の Elbe という小さな町にこのような観光鉄道がありました。ご多聞に洩れず元は森林鉄道だった様ですが、この写真は世界最大の自動車会社GMの電気機関車事業部(Electro-Motive Division)EMDが 1950年頃Northern Pacific 鉄道用に製作したF9A型ディーゼル機関車です。ディーゼルエンジンなのに何故電気機関車事業部かというと、ディーゼルエンジンで発電機を回しその電気でモーターを回す方式の為で、その方が構造的には複雑になるものの、原動機としてはディーゼルより電気モーターの方がトルクや回転速度の制御がしやすいからでしょう。



<Mount Rainier Scenic RailroadのShay式SL>
1929年にHeisler Locomotive Works という会社が製作したShay式SLで、この写真では見えませんが動力台車は炭水車の下を含めて3台あり、左右両脇に各1設けられたシリンダーが車台下中央の駆動軸を回転させる仕組みです。



前記のSLが観光客を満載した客車を牽引して Elbe 駅を出発したところです。



<ALICO 製SL> Elbe 駅にもう1台のSLが待機していました。 American Locomotive Company 略してALICO が1929年にHammond Lumber Company という材木会社用に製作した2-8-2 形式のSLです。



これはご愛敬で、Elbeの町の個人のコレクションらしく、鉄製のSLオブジェがありました。手前のキリンらしい動物も鉄製です。


<あとがき>
アメリカは建国してから230年しか経っていない若い国の為か、日本に比べてあまり年数が経たないのに骨董価値が生ずるのと、広い土地柄と桁外れの金持ちがいるため、機関車の様な大きなものまでよく保存されています。
一方、熱心な鉄道マニアなら鉄道や車両そのものを目的に米国旅行をしたり、そうでなくても事前によく調べてから旅に出るのだろうと思いますが、私の場合はそれ程ではないので、偶々見かけたものを写真に撮り、後から「あの機関車は何だろう?」という事になります。昔なら図書館で調べたり、鉄道マニアに写真を見せて鑑定?して貰う他知る方法がありませんでしたが、今はインターネットで全米を探し回ると、流石アメリカで博物館や町の観光局の公的サイトの他に、物好きだか暇人が多いのか実に多くの鉄道サイトにぶつかり、それでかなりの(あるいは必要以上の?)事が解るので重宝しています。

撮影データ
撮影時期:最初の写真は1976年、その他は2006年9月
撮影場所:米国 オレゴン州、コロラド州、ワシントン州(西海岸)
カメラ: 最初の写真のみHONEYWELL PENTAX SP500;スーパータクマー 55 mm
その他はPENTAX MZ-5 レンズ: SMC PENTAX-FA 28-105 ズーム及び
OLYMPUS ミュー _II

以上
 
 
Photographs copyrighted (2003〜2007, Vic Goh)
 
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