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川出さんの定年退職10周年を記念しての エッセイ「旅のひとこま」第12回目は「首都ブダペストとドナウベント、ハンガリ−」です。

  - ヨーロッパ旅のひとこま -      2005年9月  川出 敏一

(12)首都ブダペストとドナウベント、ハンガリ−




1100年の歴史を誇るハンガリ−は、過去に様々な民族の支配を受けて来ました。近年に於いては第一・二次世界大戦で敗戦国となり、その後社会主義の体制を経て1990年民主化に移行、昨年EUの加盟を果たした国です。                     
首都ブダペストはドナウ川を挟んだ美しい町でその景観はユネスコの世界遺産に登録されています。ドナウ西岸のブダの丘には戦禍から再建された王宮、高さ80mのゴシック様式の尖塔を持つマ−チャ−シュ教会、白い塔とカタツムリのような螺旋形回廊の漁夫の砦があり、夜間には全体がライトアップされています。          
4頭のライオンが守る美しい“くさり橋”の対岸には新旧市街が広がり、特に川沿いの国会議事堂はハンガリ−で最も壮麗な建築物と言われておりぜひ訪れたい所です。エリザベ−ト広場からマジャル人の建国1000年を記念して作られた英雄広場に至るアンドラ−シ通りは、オペラハウス・リスト記念館・老舗レストラン・カフェ−の並ぶお洒落な高級住宅街です。                  
首都ブダペストの北側、スロヴァキアとの国境でドナウ川は大きく曲がり、ドナウベンドと呼ばれています。流域には芸術家の集まる美術館と教会の町センテンドレ、丘の上の王宮跡ヴィシェグラ−ド、カトリック総本山のあるハンガリ−王国発祥の地エステルゴムがあります。                           
ドナウ川を挟んでハンガリ−の東側は国土の半分以上を占める大平原であり牧歌的な風景が広がります。北部山岳地帯にあるエゲル、トカイの町はハンガリ−を代表するワインの産地であり、またカロチャはカラフルな花模様と緻密な透かしが特徴のカロチャ刺繍やハンガリ−料理に欠かせない香辛料パブリカの産地です。まだまだ自然が豊かな国で格別に美味しい野菜が食卓に上がります。

平成17年9月記
写真はドナウ河畔の首都ブダペスト、対岸に国会議事堂が見えます。



川出さんの定年退職10周年を記念しての エッセイ「旅のひとこま」第11回目は「ハプスブルク家の栄光の都ウイーン、オーストリア」です。

  - ヨーロッパ旅のひとこま -     2005年8月  川出 敏一

(11)ハプスブルク家の栄光の都ウイーン、オーストリア




ハプスブルク家の神聖ロ−マ帝国またオ−ストリア・ハンガリ−帝国の都として、ウイ−ンは何世紀にも亘りヨ−ロッパの政治・文化の中心地として栄えて来ました。その栄光の歴史はウイ−ン市内の壮大な建築物や膨大な美術・工芸品から伺い知ることが出来ます。                                 
1918年迄の650年間ハプスブルク家皇帝の居城であった王宮は新旧王宮と庭園からなり、新王宮は民俗学博物館・王家の武器や楽器の博物館になっております。旧王宮にはウイ−ン少年合唱団のミサが行われる王宮礼拝堂、エリザベ−ト王妃が住まわれたアマリア宮、最高級の食器を揃えた家族食堂のある皇帝の部屋、王家の婚儀が行われるアウグスティ−ナ教会などがあります。                   
ハプスブルク家の夏の離宮シェ−ンブルン宮殿はベルサイユに対抗して造られたヨ−ロッパで最も壮麗な王宮で、会議は踊るで有名なウイ−ン会議の舞台になった所です。外観はマリア・テレジア・イエロ−のクリ−ム色、内装はロココ式で金箔をふんだんに使った漆喰装飾とボヘミアングラスのシャンデリア、陶器の暖炉設備など豪華そのものです。                                   
ベルヴェデ−レ宮殿はトルコ軍を破った英雄プリンツ・オイゲン公の夏の離宮で上下宮と広大な庭園からなります。噴水や木々の植え込みが見事なバロック庭園からは、遥かにウイ−ン旧市街の美しい家並みを見ることが出来ます。ウイ−ンはまた芸術の都、マリア・テレジア広場にあるヨ−ロッパ屈指の美術史館にはハプスブルク家歴代の収集品が展示されており、特にブリュ−ゲルの作品は圧巻です。また世紀末を彩ったグスタフ・クリムトをリ−ダ−とするウイ−ン分離派の絵画はベルヴェデ−レ宮殿に数多くあり、また実用的・モダンなユ−ゲントシュティ−ルの建築はカ−ルスプラッツ駅・セセッション館・マジョリカハウスなどに見ることが出来ます。
        
音楽分野ではパリ・ミラノと並ぶ国立オペラ座、ウイ−ン・フィルハ−モニ−のニュ−イヤ−・コンサ−トでお馴染みの楽友協会ホ−ル、ウイ−ン交響楽団の本拠地コンツエルトハウスなどがあります。ウイ−ンはカフェ発祥の地で歴史的カフェが数多くあります。またハプスブルク家の皇帝・王女様が好まれた美味しいお菓子も沢山あります。フランツ・ヨ−ゼフ1世お抱えのデ−メルやザッハ−トルテで有名なザッハ−で美味しいお菓子とコ−ヒ−を頂きましょう。

平成17年8月記
写真はハプスブルク家の王宮、皇帝の部屋前です



川出さんの定年退職10周年を記念しての エッセイ「旅のひとこま」第10回目は「永世中立を謳う金融と観光立国ヘルヴェティア」です。

  - ヨーロッパ旅のひとこま -    2005年7月  川出 敏一

(10)永世中立を謳う金融と観光立国ヘルヴェティア


スイス連邦は九州よりやや小さい面積で国土の3/4が山地であり、独・仏・伊・ロマンシュ語を公用語とする多民族国家です。国の周囲にはモンブラン・マッタ−ホルン・モンテロ−ザ・ユングフラウなど4000m級の山々が並び、年間を通して観光客で賑わっています。                                  
ツエルマット・インタ−ラ−ケンなどの観光基地には日本人の観光客も多く、お土産店には日本人のセ−ルスマンが居り、レルトランのメニュ−にも日本語があり、登山電車のアナウンスも独・仏・英に次いで日本語が流れて来ます。スイスのお土産は格調が高く、時計のタグホイヤ−・ロレックス、オルゴ−ルのル−ジュ、ナイフのヴィクトリノックスなど世界の一流品が並んでいます。                  
観光客を泊める民宿の横には農耕機械が置いてあり、山腹を見上げると急斜面の横方向に道路が走り耕作地や放牧地が広がっています。観光だけに頼らず一次産業にも精を出すスイス人の勤勉さを見る思いです。
                   
ジュネ−ヴもレマン湖の辺にある観光都市ですが、国連欧州本部などがある国際都市でもあります。時を同じくしてアラブの王様が3台のジャンボ・ジェット機をチャ−タ−して休暇に来られていましたが、その随行員の方々の為にホテルは満杯の盛況、街はアラブのお客様で溢れていました。恐らくこのアラブの王様もスイスの金融機関と多額の取引をお持ちと思いますが、この辺りは私達には計り知れない世界、スイスと言う国は勤勉さと合わせて“したたか”なる側面も持っています。
        
永世中立の国スイスは、国民皆兵制による国防体制をとっております。訓練で使用した兵器は各家庭に保管されており、一旦事が起こると男子は兵器を持って戦場へ、女子供はこれも常備している食料・医薬品を持って避難場所に集合、普段は観光客で賑わう山の中腹からは戦闘機やミサイルが飛び出して行くのでしょう。スイスには我々日本人が模範とすべき事柄が多い様に思います。

平成17年7月記
写真はリッフェル湖から見るマッタ−ホルンです。


 
川出さんの定年退職10周年を記念しての エッセイ「旅のひとこま」第9回目は「水の都ヴェネティア」です。

  - ヨーロッパ旅のひとこま -    2005年6月  川出 敏一

(9)水の都ヴェネティア

 
 
地中海を支配する最強の共和国と言われたヴェネツイアは網の目の様に運河で囲まれた多数のラグ−ナ(潟)からなり、今に残る繁栄当時の姿と水の都の風物詩を求めて世界各国から多くの観光客が訪れています。

街の中心は157×82mのサン・マルコ広場でサン・マルコ寺院は五つの門と五つのキュ−ポラを持つロマネスク・ビザンティン様式の建物です。内部の説教壇・祭壇・礼拝堂は黄金に輝くモザイク模様の中に貴石が散りばめられ、ビザンティン帝国崩壊時の戦利品で埋め尽くされています。
円柱とア−チの回廊の上にピンクと白の大理石の壁面が美しいドゥカ−レ宮殿は、歴代太守の政庁兼宮殿でヴェネツイア共和国の富と力の象徴でありました。宮殿内の大評議会の間には世界一の大カンバスと言われる大壁画“天国”22×7mがあり、控えの間・謁見の間・議場等も天井や壁面は絵画と彫刻できらびやかに飾られています。密告書を投函した“ライオンの口”は如何にも恐ろしい人面をしています。

宮殿から運河を経て対岸の牢獄を結ぶ小さな橋は四方を壁で固められており、審判を終えた囚人が失意の中に牢獄へ渡ったことから“ため息の橋”と言われております。屋上に鐘を打つム−ア人像のある時計塔・ピラミッド形の屋根を持つ高さ100mの鐘楼も広場の景観の一つです。無数の水路を持つ街並みは、中央の逆S字型の大運河で二分されています。遊覧船に乗って運河巡りをしますと、入口のサンタ・マリア・デッラ・サル−テ教会から始まり、水際には贅沢さを競った商人貴族の館200以上が13世紀の繁栄を忍ばせています。ゴンドラでの散策は情緒がありますが、まずは値段の交渉をがっちりしましょう。

サン・マルコ広場から水上バスで20分程のリド島は、イタリア最高の海岸リゾ−ト地で滞在時の宿泊地として御奨めです。ヴェネツイア最大のお祭りカ−ニヴァルの衣装やマスケラ(仮面)はお土産として最適です。七色に光輝くヴェネツイアン・グラスのブロ−チは奥様へのプレゼント、庶民にはうれしい価格です。

平成17年6月記
写真は大運河に架かるリアルト橋です平成17年5月記
     
 

川出さんの定年退職10周年を記念しての エッセイ「旅のひとこま」第8回目は「花の都フィレンツエ」です。

  - ヨーロッパ旅のひとこま -    2005年5月  川出 敏一

(8)花の都フィレンツエ

 
 
イタリアはトスカ−ナの州都フィレンツエは、文字通リ花の都でルネサンス文化発祥の地です。絵画・彫刻・建築の天才ダ・ヴィンチとミケランジェロが青年時代を過した街並は今でもその佇まいを残しています。アルノ川南岸の丘、ダビデの像があるミケランジェロ広場に立ちますと、川の流れに沿って緑の木々に囲まれた教会や明るい茶色の建物が並ぶ美しい市街を一望することが出来ます。ルネサンス文化とフィレンツエのシンボルであるドゥオモ“花のサンタ・マリア大聖堂”は白とピンク・緑の大理石の配列が美しい大輪の花の如き建物です。八角形をした洗礼堂は白と緑の大理石で作られ、金の浮き彫りを施した入口の3つの扉は聖書の物語を描いております。ゴシック様式の四角いジョットの鐘楼は高さが82mあり大聖堂に寄り添う様に建っています。

イタリアで最も美しい広場の一つシニョ−リア広場は、中世以来フィレンツエの政治、社会の中心地で城塞風のベッキオ宮殿は現在も市庁舎として使われております。広場中央にはメディチ家のコシモ1世トスカ−ナ公の騎馬像が立ち、傍らには愛らしいネプチュ−ンの噴水があり側廊にはペルセウスやヘラクレスの彫像が並んでいます。並びのウッフィツィ美術館はメディチ家が富に飽かせて集めた美術品を有する世界最高クラスの美術館です。宗教的な色彩が強い芸術作品が多いのですが、ボッティチェリの“春”と“ビ−ナスの誕生”は良く知られていることもあり新しい文化の息吹を感じます。ウッフィツィ美術館の階上から眺めるアルノ川沿いの風景はなかなか素晴らしく、橋上に貴金属・宝石店の並ぶフィレンツエ最古のヴェッキオ橋も見えます。

変わらぬ佇まいの街では手作りの品が大切にされています。近郊のマテネッロの小さな工場で作られる手造りの名車フェラ−リは、そのモダンな赤いボディが古い街並みに良く似合います。靴に拘りのある方にはサルヴァト−レ・フェラガモの本店が御奨め、有名人の靴の木型に貴殿の物を添えてみませんか。庶民はトスカ−ナ州の名物料理Tボ−ン・ステ−キと名酒キャンティ・クラシ−コ赤を楽しみましょう。

平成17年5月記
写真はウッフィツィ美術館の内部です。

川出さんの定年退職10周年を記念しての エッセイ「旅のひとこま」第7回目は「永遠の都ロ−マの散策」です。

  - ヨーロッパ旅のひとこま -     2005年4月  川出 敏一

(7)永遠の都ロ−マの散策

 
 
ロ−マの主要な観光ポイントは都心から5Km程の範囲内にあり徒歩による散策がお奨めです。
ビットリオ・デ・シ−カ監督の終着駅テルミニ駅からスタ−ト、古代ロ−マ最大の浴場遺跡が残る共和国広場を経てクイリナ−レ通りに出ますと、角にモ−ゼの像の噴水があります。帝国時代から水路が完備している為市内には至る所に噴水や泉があります。バルベ−ニ通りを進みますと、ほら貝を吹く半人半魚の海神が立つトリト−ネの噴水広場に出ます。

右のヴェネット通りは高級ホテル・ブティック・オフイスが並ぶハイソな街でフェデリコ・フェリ−ニの“甘い生活”の舞台です。すぐの所に大きな貝殻を背負った蜂の噴水と聖職者の骨を飾った骸骨寺があります。左のシステ−ナ通りの先がスペイン広場で蜜蜂と太陽を飾った小舟の噴水があり、三位一体教会前のスペイン階段にはロ−マっ子や観光客が集まっています。高級ブランド店の並ぶコンドッテイ通りを経てコルソ通りを南下すると首相官邸のキジ宮殿に出ます。東に入るとロ−マ最大の噴水、海神ネプチュ−ンが海馬を駆るトレビの泉に出ます。コインを後ろ向きに投げてロ−マへの再来を期しましょう。西側にあるパンテオンは43mの大円蓋に柱が一本もなく脅威の古代建築です。

南下してヴェネツイア広場に出ますとここは交通の要所、ロ−マの休日でヘップバ−ンとグレゴリ−・ベッグがバイク2人乗りで登場した所です。中央のヴィットリオ・エマヌエレ2世記念堂は白大理石の大きな建物で散策の目印になります。フォ−リ・インペリアリ通りの先には大殺戮の舞台コロッセオがあり、目の前は古代ロ−マの宗教・政治・経済の中心をなす大遺跡群フォロ・ロマ−ノがあります。市街の復元図を見ながら往時を偲んでみましょう。パラティ−ノの丘に登りますとロ−マ市内が一望出来、麓にはロ−マの休日で有名になった“真実の口”があるサンタ・マリア・イン・コスメディン教会、映画ベンハ−のモデルになった古代ロ−マの大競技場チルコ・マッシモがあります。

テヴェレ河の対岸にあるヴァティカン市国は城壁に囲まれた独立国家で、スイス兵に守られていますがパスポ−ト・コントロ−ルはありません。サン・ピエトロ寺院はカトリックの総本山で世界一の大寺院です。前面に広がる長径284mの壮大なサン・ピエトロ広場は中央にオベリスクが立ち、両側には4列・284本のド−リア式円柱回廊が並んでおります。システィ−ナ礼拝堂の最後の審判と大天井画はともにミケランジェロの作で必見の物です。

参道を少し行くとサンタンジェロ城があります。古代ロ−マ特有の円形をしており、プッチ−ニのオペラ“トスカ”の舞台になった所です。帰りはヴィトリオ・エマヌエレ2世通りを進めば市の中心部に出ます。夕闇が迫り食事の後はカンツオ−ネを聞きましょう。カラカラ浴場跡で1990年に収録されたメ−タ指揮200人編成のオ−ケストラによる“カレ−ラス・ドミンゴ・パヴァロッティ・イン・コンサ−ト”(DECCA430 433-2)は曲目・音場感とも抜群の一品です。

平成17年4月記

写真はサンタンジェロ城と同名の橋です。
     
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