川出さんの定年退職10周年を記念しての エッセイ「旅のひとこま」第3回目は「コ−ト・ダジュ−ルとプロヴァンス」です。
- ヨーロッパ旅のひとこま - 2004年12月 川出 敏一
(3)コ−ト・ダジュ−ルとプロヴァンス
トゥ−ロンからニ−ス、モナコを通りイタリア国境までの地中海沿岸をコ−ト・ダジュ−ルと言います。年間を通して温暖な気候で、青い海と降り注ぐ太陽が訪れる人達を魅了しています。
イギリスやロシアの貴族が避寒地としてこの街を造ったのが始まりで、海岸沿いの道プロムナ−ド・デ・ザングレ(イギリス人の散歩道)はその名残です。19世紀末にはルノワ−ル、マティス、シャガ−ル、ピカソなど世界に名だたる画家が来てこの地を有名にしました。
ニ−スの丘の上、高級住宅が立ち並ぶスィミエ地区の一角にシャガ−ル美術館があります。旧約聖書のエピソ−ドをテ−マにした17点の連作はメルヘンチックな感じがします。プロヴァンス地方は穏やかな美しい自然が広がっており、その景観美を求めてゴッホやセザンヌがこの地を訪れています。中心都市エクス・アン・プロヴァンスではこの地で生れ育ったポ−ル・セザンヌのアトリエ、さらに題材となったサント・ビクトワ−ル山を見る事が出来ます。また郊外には紀元前19年頃造られた高さ49m、長さ275mの大水道橋ポン・デュ・ガ−ルがあります。
アヴィニヨンは14世紀にロ−マから法王庁が移された街で高さ50mの外壁に囲まれた巨大な法王庁宮殿があります。しかし“アヴィニヨンの橋”で歌われたサンベネゼ橋の方がお馴染みですね。アルルにはロ−マ時代の遺跡が多く、古代劇場、円形闘技場、コンスタンティヌス大浴場跡等があります。またゴッホ所縁の地で、ゴッホの描いたアルルの跳ね橋(復元したもの)、自らの耳を切り落として療養生活を送った病院を見ることが出来ます。プロヴァンスの生活はピ−タ−・メイル著の“プロヴァンス・シリ−ズ”でお楽しみ下さい。
記 平成16年12月
写真はアヴィニヨンの法王庁宮殿です
川出さんの定年退職10周年を記念しての エッセイ「旅のひとこま」第2回目は「スペイン市民戦争とモデルニスモ、バルセロナ」です。
- ヨーロッパ旅のひとこま - 2004年11月 川出 敏一
(2)「スペイン市民戦争とモデルニスモ、バルセロナ」
スペインは1936年から3年間の内戦の後、フランコ将軍による独裁政権が続き、1975年に立憲民主国になりました。バルセロナの繁華街ランブラス通りではアナキストとコミュニストが対峙して市街戦が行われ、当時両雄が割拠した電話局、ポリオラマ劇場、ベレ−ン教会が現在も残っています。自らも銃撃を受けて九死に一生を得たジョ−ジ・オ−ウエルはその著“カタロニア賛歌”で市民戦争の陰惨な混沌とした有様を克明に描いております。
現在の通りには道路脇に露店が立ち並び、大道芸人が芸を競い合って多くの観光客で賑わっています。南端の海辺には高さ60mのコロンブス記念碑が立っていますが、西南方向に目を転じますと、ビルの屋上に赤いJVCのマ−クが見えます。バルセロナではカタル−ニャのア−ル・ヌ−ボと言われるモデルニスモの建築物を数多く見ることが出来ます。
良く知られているのはアントニ・ガウディのサクラダ・ファミリア贖罪聖堂ですが、その他にも巨石をくり貫いたミラ−邸、色ガラスと粉砕タイル張りの竜宮城パトリョ−邸、門扉にドラゴンが絡み付いているグエル別邸、破砕タイルの色彩も鮮やかにお伽の国を醸し出すグエル公園などがあり、これらは全て実用に供せられています。
その他、コロンブスがイサベル女王の謁見を受けた王宮、高さ70mの尖塔が聳えるカテドラル、ピカソ美術館など街の散策は飽きることがありません。歩き疲れたらバルで一休み、スペインにはシェリ−酒なる独特なワインがありますが、ビ−ルのグラスを片手にタパス(つまみ)を味わう方がスペインらしさを感じます。
平成16年11月 記
写真はグエル別邸のドラゴンの門、グエル氏はガウディの偉大なるスポンサ−です。
- ヨーロッパ旅のひとこま - 2004年10月 川出 敏一
今回川出さんの定年退職10周年を記念しての エッセイ「旅のひとこま」を1年間の予定で毎月連載いたします。まずはスペインから...
(1)コスタ・デル・ソルとアランブラ宮殿、スペイン
ジブラルタル海峡からグラナダの南まで約250kmの地中海沿岸をコスタ・デル・ソル(太陽の海岸)と言います。燦燦と降り注ぐ太陽の光と紺碧の海のリゾ−ト地で、バカンスの季節にはスペイン各地や海外からの人達で賑わいます。高級ホテルに宿泊して海水浴は昼まで、新鮮な魚介類の食事と甘い果物のデザ−トの後はたっぷりとシエスタ(午睡)を取ります。
日差しが衰える夕刻からは街中の散策と買い物、夜の帳が下りましたらお洒落をして食事の後はタブラオでフラメンコを観賞します。海岸沿いの街ミハスは赤い花を添えた白壁の家が並び、如何にも地中海風です。内陸に入りますと、カルメンとドン・ホセの物語の舞台セビ−リャまた850本の大理石の円柱が林立する荘厳な回教寺院メスキ−タのコルドバがあります。
グラナダはイベリア 半島最後の回教王国でしたが、レコンキスタ(国・宗教の統一)を志すイサベル女王とヘルナンド国王のキリスト教連合に追われ1492年最後のム−ア人国王ボアブディルは一族ともども宮殿を去って行きました。
アランブラ宮殿はアルカサ−バ・王宮・ヘネラリ−フェからなり、宮殿の内部は繊細なアラベスク模様で飾られ、中庭には緑の木々と美しい花々が咲き乱れていますが、何となく栄華の後の物悲しさを感じます。
宮殿内で居住したワシントン・ア−ビングはその著“アランブラ物語”で宮殿の各部屋に纏わる伝説や恋の物語を描いておりますが、夕刻になるとム−アの騎士や王女様が現れる感じがします。
夜ホテルでの夕食が終わった後、グラナダ大学の学生がギタ−片手に民族衣装を着て現れました。男前も奏でるスペイン民謡もなかなかのものす。外に出ますと丘の上にアランブラ宮殿が月明かりに浮かんでいました。
記 平成16年10月
写真はアランブラ宮殿、ライオンの中庭です。
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