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コロラド便り(その7)
2003年5月1日
萩原 正喜
註:このコロラド便り(その7)には、引き続き郷 勝哉氏より氏が撮影されたコロラド州や周辺の州の写真ならびにコメントをご寄稿いただきましたので、萩原さんの便りとのコラボレーションで編集させていただきました。

一部南部のBasraやNasiriyahなどでのイラク軍の頑強な抵抗があったにもかかわらず、米英軍によるイラク攻撃は圧倒的な軍事力の行使のもとに早期に全土制圧と言う結果となって、先のペルシャ湾岸戦争から10年間もの間に軍備の面でサダム・フセインは何をしていたのだろう? と思わされる結末となりましたが、彼自身は国連管理下での石油の輸出を掻い潜っての密輸で私腹を肥やして地下潜伏の準備していただけで何も国民の事を思って防衛力の強化はしていなかったのか? と言った疑問の残る結末となりました。

写真

デンバーから州間高速道25をまっすぐ北に2時間も走ると、そこはもうワイオミング州ですが、日本では州の名前より、シャイアンとかララミーの方が、映画などで馴染みがあるかもしれません。どちらもコロラドとの州境に近い町です。(上の写真と次の写真)

「目には目を、歯には歯を」のマホメット教の国とはとても思えない対応で心配されていた化学細菌兵器の使用による抵抗も無くて多数の投降兵が出てしまい、市民達には多くの犠牲者が発生しただけでしたし、制圧後の各施設での略奪の横行などはとても信心深いイスラムの教義を守る人達とはとても思えない状況だったのは真に期待外れで、バビロンの昔より何回と無く外国からの力で侵略統治されてきた地域で現代でも多分もともと実質的には国家の形態をなしていなかったのではないか、とさえ感じさせられる終結でした。 結局、最後まで忠実に任務を果たしたのはサハド情報相だけだった様です。

今後のイラク再構築の難しさがいろいろと報じられてはいますが、サダム・フセインとその息子達の行方が不明で、大量破壊兵器は発見出来無くてアメリカのイラク攻撃の理由があいまいになってしまったとしても、ともかく戦争が終結して良かった、と言う思いだけが残ったのが実感です。

コロラドから今回の攻撃に参加した部隊の兵士達の先発隊が早くも帰還して家族との再会シーンやコロラドからの戦闘や事故で死亡した兵士達7名の棺が帰還している、などの二ユースが報じられていますが、Colorado Springs にある陸軍のFort Carson基地からはイラク各地への新たに駐留部隊として数千の兵士が現在イラクに居る部隊と交代のため出陣して行きつつあります。

写真それにしても、かっての太平洋戦争時の日本への無差別攻撃と大分異なって、今回のイラク攻撃ではアメリカ軍の兵士たちにとっては、イラクの兵士達だけが攻撃ターゲットであり、市民は殺傷してはいけない、といった大変困難な条件下での戦闘だった様に感じます。 市民か兵士かの判定が難しく、一寸油断すれば自分が殺されてしまう可能性がある中での制圧活動であり、イラク全土が制圧された後でも市民達への反米活動の扇動が行われており、それへ対峙する各アメリカ軍兵士達のフラストレーシヨンは想像に難いものがあります。

今回のイラク攻撃の間に私は以前に読んで本棚に埋もれていた、下記の3つの書物を熟読しました。 こうした戦争の中にあって、 改めて通常我々が目にする報道以外の見方で世の中の動きを見て行く必要が有るのでわないか、と改めて感じさせられました。

* 「死の商人」(改訂版)・・・・・ 岩波新書458、 岡倉古志郎 著
* 「国家と情報」 ・・・・・・・・・文芸春秋 、 岡崎久彦 著
*「ユダヤは日本に何をしたか」 ・・成甲書房 、渡部悌治 著
装備の面でも実戦経験面でも今や名実ともに地球上での最強の軍隊を擁するアメリカとなっていますが、今後これらの軍事力を背景に政治・経済面での独走が無ければ良いが、と感じています。

最近ではテロ攻撃やイラクの話題はマスコミでは過去のテーマとなりつつあり、SARSの恐怖が目下の話題の中心ですが、コロラドは航空機の直接のアジアからの乗り入れも無く、中国系の住民達が少なく内陸であることも手伝って、むしろ昨年来より問題となっているウエスト・ナイル脳炎の今年の発生予測の方が大きな話題として新聞などで取り上げられています。
写真

コロラドから西北に伸びたロッキー山脈がワイオミングを通り抜けるあたりに、有名なイエローストン国立公園がありますが、そのすぐ南に 4,000m級の山々と美しい湖沼を幾つか抱えたグランドティトンという国立公園があります。写真はその主峰 グランドティトン山 4,197m 手前はスネークリバーです。

デンバー空港からカナダのトロントへはAir CanadaとUnited航空とがそれぞれ一日2便ずつを飛ばしていますが、トロントへのSARS警告が発せられてからはバッタリ乗客が減少しているのが唯一のSARSの影響です。
また、昨年コロラドでの大きな問題となった「水不足」に関しては先の「コロラド便り」で報告しました様に3月中旬に大雪が降ってその後も雪を交えた降雨が有った事から、一時心配されていた今年の夏の深刻な水不足は回避されそうではあるもののデンバー地区の水資源を供給する各貯水池の水位は未だ昨年並みに回復しただけで、充分とは言えず、相変わらず使用制限の規制は継続しています。

2大航空会社のひとつユナイテット航空の会社更正法適用に基ずく同社の再建が進行中ですが、無差別テロ攻撃の脅威に始まってイラク戦争、そしてSARS感染の恐怖とここのところ経済低迷以外にも乗客の大幅減少をまねく要素が航空各社に厳しいサバイバルの試練を与えています。
ユナイテット航空では大幅な運行便数の削減を実施し、デンバー空港では先に検討の進んでいたゲート数の拡張工事について延期を決定しています。
長距離国際線では従来メインに使われていたボーイング747型から運行効率の良いボーイング777型に国内線で使用していた分もまわして国際線での使用に切り替えを行なっています。

しかしながら、イラク戦争中もプロ野球メジャー・リーグを始め各スポーツは通常通り行われていましたし、日常生活でもイラク戦争は日常の出来事の一つで、従軍している兵士たちはプロとして戦闘に励むといった雰囲気で、9・11の時に国民全体が感じた非常事態といった特別な雰囲気が全く感じられないのはアメリカといった国の大きさを改めて思い知らされた感がします。
これも、今までに直接本土を外国から直接攻撃されたことの無い大国である事に起因していると思いますし、今後もテロ攻撃を含めてアメリカへの直接攻撃に関しては必要以上に敏感に反応する様になっている、という感じがしています。

写真

グランドティトン山系の東南側はジャクソンホールと呼ばれる盆地になっていますが、1953年に公開された映画シェーンのロケ地として一躍有名になりました。写真はランデブー山に登るロープウェイの駅と山頂付近の高山植物です。(上の写真と次の2枚)

西ナイル脳炎について:

数年前からアメリカの東海岸から始まって徐々に西へと進行してきた蚊を媒介とするウエスト・ナイル脳炎ですが過去全米では子供や老人などの体力の無い人達を中心に150名程の死亡者が累計で発生するという事態で、とうとう昨年夏にはコロラドへも到達して、死亡者こそ無かったものの13名の感染が記録されました。
中南米のメキシコ、ドミニカ共和国、ジャマイカ等で発生する蚊によって渡り鳥へ感染し、その鳥が夏の間アメリカ各地で過ごす間に新たな蚊によって4月初旬に卵から数週間で蚊に孵化して更に鳥へは4月下旬、コロラドには牧場で多く見かける馬へは6月、更には人への感染は6月下旬から8月にかけての感染が昨年記録されています。

現在までの調査の結果この媒介をする蚊はCulexと呼ばれる蚊の雌であるとされており、卵を体内に育成する時に動物の血を吸って、その時が最も危険とされています。 この蚊の寿命は6週間ほどですが、排卵した卵から多くの新たな蚊が発生するので、基本的には蚊を発生させない駆除方法が最も効果的で、また感染しないためにはこの蚊の活動が活発な明け方や夕刻に外で活動しない事や長袖の衣類、長ズボンを着用するのが良い、また、家の中へ蚊が侵入して来ないようにドアーや窓の部分の密閉度を上げるなどの警告が市当局から発せられています。

コロラドへの南部からの渡り鳥は主にメキシコのユカタン半島地域から飛来するものとされており、既に飛来してきている時期でこれからが警戒時期となっています。

昨年の年間での一人当たりの収入:

写真経済調査局ではアメリカの各州別の2002年に於ける個人所得合計をその州の総人口で割った数値を最近発表している。
その統計によるとコロラド州は全米で2001年にはトップ7位であったのが0.5%低下して9位となっている。 ちなみにトップ10位の中では全ての州が増加している中にあってコロラド州だけが低下している。 全米の平均値は1.7%の増加となっている。
1位はコネチカット州、2位がニュージャージー州、3位はマサチューセッツ州で10位がカリフォルニア州となっている。

コロラド州の人口一人当たりの所得は33276ドル/年で、実質的な勤労者の平均所得は2001年では36030ドル/年であった。
それまで全米で最も経済発展を遂げてきたコロラド州であるが、昨年コロラド州を吹き荒れた大型解雇の影響が出てきていると言える。 扶養家族を帯同しての他の州からの移住してきた人口が急速に増加している事から分母の人口が増加したのも一因と言える。
今年一月に於けるコロラド州の失業率は5.4%と高い水準となったままであり、小売業での購買レベルには一昨年に比べて横ばいであるものの、コロラド州としての州の租税収入は一昨年に比べて8.3%も減少している。

そんな中にあって、2002年の会社業績に基ずく恒例の「Fortune 500」のランキングが発表されているが、コロラド州に本社を置く企業ではビールのCoors社が422位と初めて仲間入りした。 その外の企業ではFirst Data 242位、Echostar341位、Ball Aerospace415位、Level 3 Communications 481位の合計5社となっている。
500社の上位にランクされている各企業の主要事業所は数多くコロラド州内で展開しているにも係わらずその本社は州外に在る為にこうしたランキングではかなり少数となっているが、良きに付け悪しきに付け企業の経営状況の影響を受け易いコロラドの各事業体構成となっている。

不景気な時にはビール会社だけが元気、と言う事でCoorsの出番となっているが、今年はアメリカでの禁酒法が解禁となった1933年から70周年に当たるということで、全米でも最もビールの醸造所数が多く、また生産量も最大のコロラド州では町中の各バーでは記念サービスがいろいろと行われている。

米国防省の発注金額の受注ランキング:

写真2002年に国防省が発注契約を行なった総計金額1708億ドルの事業所別の受注ランキングが公表されており、コロラド州内の各企業の事業所はその全米の州別ランクでは17位で24億ドルの総計金額の受注となっている。
コロラド州内の事業所での受注高のトップはミサイルや軍事衛星を受注しているロッキード・マーチン社で金額では群を抜いており、誘導ミサイルのITT Industries社が2位、衛星システムのBall Aerospace社が3位につけている。
独自の高精細カメラを積んだ衛星を所有して地表の高分解能写真の提供をしているSpace Imaging社は440万ドルの契約高で8位となっている。

デンバーから国道70号線で西へロッキー山脈を越えてその西山麓の町Grand Junctionにある Capco社は兵士たちが所持している最もポピュラーな自動小銃M―15型の部品をアメリカ内で最も多く製造しており、併せて米海軍の艦載ジェット機が敵のミサイルで追撃を受けた時に発射して追尾を撹乱するImpulse Cartridge の約8万発を納入している。
こうした軍の活動するための兵器として最近その開発が急がれているものとして、「 Non Lethal Weapon 」と呼ばれている、威嚇の為の殺傷能力の無い銃弾で、既にゴム製の弾丸をイスラエル兵士がパレスチナ人達の抑制に使っているのでお馴染みとなっているが、アメリカのイラク制圧後の駐留時にも反米デモの抑圧や国連監視団の活動時の防御のため等で重要となって来ており、テロ・グループの町中での活動の抑制に効果的なものの開発が急がれている。

この様な戦争や防衛の為の武器やサービスは使う機会が無いのに越した事はないが、アメリカの世界中へ拡大した軍隊の駐留や今回のイラク攻撃更には先のアフガニスタンでの戦闘時などで実証されているように時代のニーズに従って日進月歩で進歩したハイテク機器が使われる様になってきているのを支えている企業が多くコロラド州内にも存在しているのが分かる。
写真

映画シェーンの撮影に使われた納屋、バックはモラン山 3,842m

ビッグ・ストロー計画の調査開始が議会を通過:

かねてより議題に載っては消えていたロッキー山脈を西へ下っているコロラド・リバーの水を 隣のユタ州の州境近くで塞き止めてそこからパイプでロッキー山脈をさか上って東山麓のデンバー地区へ供給しようという「Big Straw Plan」に関してコロラド州議会で審議が昨年来行なわれていたが、今回その調査を行なうのに必要な50万ドルの予算の認可が議会を通過して州知事の裁量にまかされる事となった。
このビッグストロー計画がコロラドの水不足に効果を発揮するかどうか等のフィージビリテイを調査するものであるが、州としては今後の経済発展を望むのであれば人口増加に伴う水の供給確保は不可欠条件であり、昨年の様な異状渇水でなくてもデンバー地区では今後の重要課題となっている。
この計画に要する費用は、調査費として50万ドル、予測建設費として50から150億ドル、でユタ州境からロッキー山脈をさかのぼり東山麓まで200マイル(320km)をパイプで4500フィート(1350m)の高低差をポンプで汲み上げよう、と言うものである。

川の中にいたムース(日本名へら鹿)、顔は馬づらですが鹿のような角があり、
体は牛そっくりの奇怪な動物です。(下の写真)


写真長期な視野で考えれば、むしろコロラドが異状乾燥の時は大水で、コロラドに水が豊富な時には乾燥しているミシシッピー河や百歩譲ってミズリー河からはるかに長距離ではあるがパイプで引いて来る方が高低差も少なく良いし安心なのではないか、と私個人的には考えるが水利権の確保に問題が無いコロラド内で遣り繰りする方が良いとの判断が働いているものと考えられる。
果たして調査結果がどう出るか注目である。

私の住んでいるAurora 市では5月3日より新たな水使用制限の規制が施行されて、
* ハウス番号が奇数の家は水曜と土曜日、偶数の家は木曜と日曜日の週2日のみで午前10時から午後6時までの間を除いた一時間だけが芝生への散水が許可される。(日中は水蒸気となっての蒸発量が大きいので散水は禁止)

* ホースからの散水による洗車は禁止され、バケツに水を汲んでの洗車のみ許される。
* 新しく芝生を植える事は許されない。
* 新しく木や花や野菜を植える事は許されるが、それらへの散水は芝生への散水のスケジュール内で行なう。 樹木は根が深く散水を多く必要としないものを植えるようにする事。
* 自宅にプールを持っている家ではそれに水を張ってはいけない。

と言ったような内容で、今までは芝生への散水も洗車も許されていなかったので少し楽になった訳ではあるが、水不足で一部枯れ始めている芝生が各家々で見られるのは今年中には回復しそうにない。 また、各ゴルフ場では自分で賄える水利権(主に地下水の汲み上げに頼っている)を持っていないところでは今年の夏は閉鎖せざるを得なくなっている。
新築家屋では新しく開発された見た目は芝生にそっくりで人造の材料で出来ているのでもちろん散水は全く不用の人工芝生が紹介されて使われ始めている最近である。
「湯水の如く使う」と日本では充分ふんだんに有ることの代名詞となっている水はコロラドでは大変貴重な資源として今後の経済発展の鍵と成りそうである。

写真

スネークリバーとモラン山

ロッキード・マーチン社が日本のJSATの衛星の受注に成功:

最近の日本とコロラド関係の二ユースとして、打ち揚げ衛星では業界で2位のロッキード・マーチン社が日本の通信・放送衛星では最も大きな商用衛星会社のJSATとの間で2年間にわたる衛星の初めての受注契約に成功した、と報じてられている。
契約高の総金額は開示されていないが、衛星は日本及び東南アジア向けの商用の通信と放送に使用されるものである。

コロラド州から外国への輸出先国の分布:

昨年2002年のコロラド州から外国への輸出は金額にして一昨年の2001年に比べ9.9%の減少となっていて、今年の成果がどうなるか心配されている。 そんな中にあって昨年の国別のコロラドからの輸出先は順位別にリストアップすると下記の様に為っており、今回のアメリカのイラク攻撃に対して支持した国と反対した国とが交互となっていて注目されている。 ちなみに日本は4年前までは継続してトップの輸出先であったが,経済不調の長期化から徐々に金額的に低下してきており、一方NAFTA条約の影響でメキシコからカナダへの陸路輸送のハイウエイ(NAFTAルート)がコロラドを通過している事の影響で、メキシコやカナダとの取り引き金額が上昇してきているのが最近の傾向である。
NAFTAルートは一方、麻薬の密輸ルートでもあり、コロラドのハイウエイ・パトロールでは近年その取締の強化をしており摘発件数も増加している昨今である。

順位 輸出先国 2002年輸出額 (百万ドル) イラク攻撃・
支持/不支持
1 カナダ $5521.0 不支持
2 日本 $1426.0 支持
3 メキシコ  $436.0 不支持
4 韓国  $370.3 支持
5 ドイツ  $320.4 不支持
6 イギリス  $290.2 支持
7 フランス  $281.5 不支持
8 シンガポール  $237.3 支持
9 香港  $235.9 不支持
10 オランダ  $209.0 態度不表明

たまたまこうなってしまったのだとは思うが、不支持の国でも今年はコロラドからの産品の輸入を沢山して欲しい、との州政府の願いである。

[以上]

 
 
Copyrighted to: Mike Hagiwara
Photographs copyrighted (2003, Vic Goh)
 
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