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コロラド便り(その5)

2003年3月1日
萩原 正喜
註:このコロラド便り(その5)には、引き続き郷 勝哉氏より氏が撮影されたコロラド州での写真ならびにコメントをご寄稿いただきましたので、萩原さんの便りとのコラボレーションで編集させていただきました。


年間でも最も寒い季節を迎えているコロラドですが、アメリカ大陸を西から東へと横切るジェット気流の蛇行の具合で寒暖の差が極端に変化する最近です。

通常はコロラド州の北のワイオミング州やモンタナ州の上空をジェット気流が通過しており、コロラドでは南西の風とともに温暖なカリフォルニア湾からの空気で穏やかな陽気ですが、一旦ジェット気流の通り道が南下して来るとカナダからの寒気が流れ込んで高地である事も有って極端に気温が低下し雪も伴って一変に縮みあがる、と言ったかなりハッキリした天気予報者にとってやさしい最近の気候です。 今この便りの記述をしている時でも明朝は華氏で零度以下(摂氏で零下20度)になるから動物を屋外に放置しないように、との警告をTVが流しています。

今までのところ例年に比べて暖冬で降雪量も少なく、このままで行くと昨年夏の極端な乾燥状態からの水不足と森林火災の問題は昨年以上にコロラドでは深刻となると予測されています。
特に水はロッキー山脈の冬季の積雪を貯水池に溜めて一年分を賄っている事から、昨年の消費で各貯水池ともに昨年の同時期に比べて現在60%位の貯水量となってしまっておりデンバーやオローラの各市では昨年以上の水使用制限の規制を今から施いています。

アメリカの東部では大雪に見舞われたり、洪水となったり、と言うのに世の中うまく行かないものです。 そんな状況のコロラドから近況を皆さんへお伝えしたいと思います。


コロラド州の西寄りにロッキー山脈が南北に走っていますが、その一部がRocky Mountain National Parkと呼ばれる国立公園になっています。この公園はデンバーからも近く、標高 4,000m級の山や湖、湿原などを抱え、トレッキングや野生動物の観察、山岳ドライブなどを楽しめる大リクリエーション地となっています。


テロ攻撃の警告とイラク攻撃とに緊張するコロラド:

2月8日金曜日から日曜日にかけては、アメリカではイスラムでのメッカ巡礼の大会合が終了する事から新たなテロ攻撃の可能性が高いとのCIA情報に基ずき厳戒体制に入りました。 デンバーでも空港や町の要所には自動小銃を抱えた州兵が立って緊張の週末でしたが、国連でのイラク査察団の活動に3月1日のハンス・ブリックス査察団長の次回報告までの継続猶予に米英で合意した事から、ややほっとした雰囲気にしばらく戻っています。

コロラドには空軍の大きな基地が3つと陸軍・海兵隊の広大な演習場を抱える基地が一つ在りますが、2月17日には5400名の兵士達が中近東へ出兵しています。 また、医療部隊の兵士や看護婦、飲料水の特別供給部隊など合計250名の部隊も2月初めに出かけて行きました。
いよいよ、2月末にはアメリカ軍のイラク攻撃も戦闘器材や後方支援も含めて完全にその準備完了となりそうですので、一体どうなるか固唾を飲んで見守るところです。

日本では、北朝鮮のテポドンやロドンのミサイルが最も気になるところでしょうが、大勢の北朝鮮の同胞も住んでいて、そうした人達からの資金や物資の供給も日本から行っている事もあり、あまり心配はいらないのかもしれませんが、アメリカの国防情報局長が上院の国防聴聞会で北朝鮮が所有している弾道ミサイルのテポドン2の3段ロケットのものはアメリカの西海岸へ届く能力が有る、と証言した事からアメリカ内では異常な程の反応を見せました。 特に今までのロドンやテポドンの日本海や日本列島を越えてのテスト発射と同様にテポドン2のテストも近い内に行う可能性が有るとの事も含めて緊張状態とも思える過剰反応をアメリカ内では示しています。

太平洋戦争では日本のハワイ真珠湾攻撃からその端を発しましたが、今までアメリカ本土が外国からの攻撃を受けた事が無かった事から先の二ユーヨークやワシントンでの同時多発テロについては「第2のパールハーバー」と言うような報道がなされた程でしたが、北朝鮮が核兵器の準備開発を行っている、との国連での報告とともにそれがアメリカ本土へ到達する能力が有るとなるとオチオチして居られない、と言う事からの反応と言えます。


公園の中には美しい湖が数多く点在していますが、その中の一つのベアレイク。
30分ぐらいで一周できる可愛らしい湖で、お天気がよければ水面を隔ててロングスピーク 4,345m が見えます。

もともと日本や朝鮮はアメリカの一般の人達にとってみると「Far East」で遥かに遠方の国々と言う感覚です。
日本で使われている世界地図では日本列島が中央に位置するように記されているものが一般的で我々は小学校の頃からその地図に親しんでいるのでアメリカの西海岸は太平洋を挟んで隣の場所の感覚ですが、アメリカでは経度の東経・西経ゼロ度を中央に記した地図が使われています。

そうした世界地図ではアメリカやハワイが最も左に位置して、日本は右端と、それぞれ両端に配置されています。 新聞で北朝鮮のテポドン2の事を伝える新聞記事に添付されている地図も同じ物が掲載されており、この様な地図で見ると北朝鮮からミサイルがアメリカ西海岸へ到達すると言う事はこうした地図に親しんで来た人達にしてみると「まさか?」と言う感覚なのです。

ロサンゼルスやシアトルの様に日本人や日系人が大勢住んでいて日常的に日本との往来の頻繁な地域の人達にとっては少し異なる感覚ではあるものの、通常の一般アメリカ人にしてみると、こうした出来事一つとっても日常的に使用している世界地図を日本で使っているものと同じ配置のものに小学校の頃から替えない限り何時まで経っても日本はFar Eastの遠方の国と言う感覚は取り除けないのだと感じているこの頃です。
従って、石油も産出してアメリカからは北朝鮮より半分位の距離に在るかに見えるイラクの方が遥かに身近な事の様に映ってしまうのはやむを得ない事なのかもしれないと思います。

感覚的に我々日本人が隣国アメリカを見ているのと同じ感覚でアメリカ人達が日本を見ていると思うと、全く違うのだと言う事なのです。


ベアレイク湖畔で見かけたカケスの一種ステラーズジェイ。観光客が落とす食べ物がお目当てのようで、人が来ると逃げずに近づいて来ます。


金の相場が6年ぶりの高値を付けて元気一杯のコロラドの金鉱山会社:

テキサス州の石油会社が世界のメジャーとして世界の石油の採掘から販売まで大きな影響力を持っているのと同様に、コロラド州にはそのゴールドラッシュ時代以来の金鉱山会社が多く在って、ゴールドラッシュで培った採掘技術や精練技術を活かして成長し世界の各地での金の採掘活動の主要な部分を占めています。
金の取り引き価格の推移を見てみると昨年後半から急速に価格上昇が始まってこの2月4日には1トロイオンス当たり379ドルと6年ぶりの高値を付け現在も更に其の記録を更新中です。

「不安な時の金(Gold)頼み」と言う事でアメリカ経済の不調と株式取り引きの価格低迷とから金への投資が集まっている事に起因している様ですが、ここのところアメリカのイラク攻撃の可能性が高まって来ている事から一層の金買いが進行している事によると言われています。
2年ほど前には産出コスト割れが生じてしまう、と大変難しい経営を強いられて、世界の金鉱山会社間での買収や合併が行われて来ていますが、こうした情勢下で大いに潤っているのが金を産出している金鉱山各社です。

コロラドに本社を置く金鉱山会社は全部で9社が在って、最近それぞれ各社ともに大幅な株価上昇を示しています。 その中でもデンバーに本社を置いているNewmont Mining 社が世界で最大の産出量を誇るトップ会社となっています。 同社は世界各地での金の採掘事業を展開しており、現在ではオーストラリアやアフリカ、カナダなどでの産出が主体を占めているのが実状です。
自社の株価は2倍にもなるわ、在庫保有する金の価格は大幅に上昇するわ、で世の中経済不調と言われるのに最近笑いの停まらないコロラドの各金鉱山会社です。

鳩より一寸大きいこの鳥は ナットクラッカー。
図鑑によるとロッキー山系の森のキャンプ地などによく現れるとあり、人に馴れているようです。

コロラドへの石油供給ルート:

ベネズエラの原油掘削場でのストライキとその内政不安定からアメリカへの石油の供給量の減少、そしてイラク攻撃による中東石油供給不安などからここのところコロラドでのガソリンの価格は急激に高騰しています。

コロラドでのレギュラー・ガソリンの平均価格1ガロン当たり現在安いガソリン・スタンドでも1.56ドル/ガロンとなっていますが、その購入する価格の内訳を調べて見ると税金が30%、原油料金が42%、精製費用が14%、営業配送費用が13%と言う構成となっています。日本に比べて税金の比率が非常に低くなっています。

コロラド州内でも石油の掘削は行われていてデンバー空港の広大な敷地内でも5個所程で行われていますし、デンバーから国道25号線を少し北へ行くと原油を汲み上げているポンプが数多く畑の中に点在する光景に会います。 しかしながら、その産出量は少なく、また他からの原油に比べてコスト高に付く事から積極的な掘削も行われていないので当然州内の大きなガソリンの需要を賄う為には州外からの購入に頼る事となります。
供給にはデンバーを経由して南はテキサス州の北西部にあるDumasの町から北はカナダのEdmontonに至る長大なパイプラインが埋設されていて、原油や精製ガソリンの輸送が行われています。

デンバーの町の北で接するCommerce City 地区には2つの大きな石油精製工場が在ってカナダやテキサスからパイプラインを通して送られて来る原油の精製を行っており、それでもガソリンの需要に足りない為テキサスやワイオミングの各州から精製されたガソリンの供給もパイプラインを通して受けています。 コロラドのガソリン全体の1/3はデンバーの精製所からの供給ですが、残り2/3は州外からの供給となっている現状です。

Commerce Cityにある石油精製所からデンバーのダウンタウンまでは至近距離に有ることから、石油精製と同時に水蒸気の製造供給販売も暖房用としてデンバーのダウンタウンに対して行っており、町から離れた農家や牧場で使用されるプロパンガスの製造供給もここから行われて一大工業地帯を形成しています。
もともと山岳地帯が近く冬の降雪・凍結等から大型のSUV車が不可欠な土地柄ですが、最近になってトヨタやホンダの小型SUVや乗用車が増えて来ているのが大変目に付くようになりました。 ガソリン価格の高騰への庶民の賢い選択の現われかもしれません。

放牧された馬の群? 実は隣の写真の様な鹿で、昼間は森の中に隠れていますが、夕方になると餌を食べに草原に出てくるので、その時間に合わせて見物人
も多く集まってきて、カメラの砲列が出来ます。


コロラドの天然ガス採掘:

コロラド州の北東部は恐竜の化石が多く出土する場所にもなっていて、オイルサンドの埋蔵豊富な広大な土地が広がっています。 オイルサンドの産出に関しては、今までコスト的な競争力が無い為に細々と行われていましたがここのところの原油高騰から改めて見直されて来ています。
また、近年になって天然ガスの採掘技術の進展によって現在では多くの天然ガス採掘がこの地域で行われる様になって来ています。

その内でも国道70号線沿いのGlenwood Springsの町を中心とするPiceance盆地の埋蔵量は推定で31兆立方フィートとされる莫大な量と見られており、現在の採掘の中心は輸送の便利さから70号線沿いで人口の過疎なRifle の村周辺で盛んに行われています。 国道70号線を西へ行きユタ州との州境に近くなると道路沿いに非常に沢山の天然ガス掘削やぐらが見られます。

昨年来よりこの地区での天然ガスの生産量は増加の一歩をたどっているので、その価格の高騰が生じている時期にコロラド州にとっては救いの神となっているわけです。
最近の天然ガスの採掘の方法では、高い採掘やぐらを建ててドリルで地中の所定深度まで掘り進むわけですが、地層を掘り進むのに半径360m以内について先端ドリルの掘り進む角度を徐々に変えて地層を確認しながら所定の個所まで掘り進むようになっています。 その様にして一基のやぐらで幾つもの異なる方角への掘削が可能となっているので昔のように一個所で垂直に掘り進むだけで多くのやぐらの建設を行う必要が無く、環境保全上からも良いのだと言われています。

地底2500m位いがこの地区でのガスの埋蔵されている深さとなっていて、コロラド州全体での天然ガス産出による金額は32億ドルの年額になっており、これに携わる労働者数は総員で
14000人となっています。


ロッキー山脈はアメリカ大陸を東西に2分する大分水嶺でもあり、公園の中の標高 3,279m の峠に Continental Divide (分水嶺)を示す立派な標識がありました。右矢印(西方向)は太平洋側流域、左矢印(東方向)は大西洋側流域と表示されていますが、その先をよく読むと、「こちら側の水はミシシッピ川など経由して最後はメキシコ湾に注ぐ」とあります。メキシコ湾は大陸の南に面しているのでハテナと思うわけですが、括弧書きで「大西洋の一部」と註がしてあり「なるほど」です。


NASAの新スペースシャトル計画:

去る2月1日のコロンビア号の宇宙からの帰還途中での大事故が有った直後で、まだその原因解明も終えていない分けであるが、NASAでは先に計画を進めており予算の大幅削減から中断していた次世代のスペースシャトルの実施計画を修正して再び始動を始めています。

数年前より各関係企業へはその内容についての説明がなされて、ボーイング社では実験モデル機体X−37の製作、ロッキード・マーチン社ではそのX−35設計案などが策定されて一部既に公開されていますが、今回NASAでは今までの計画に対してその重点設計項目等について修正を加えて関係企業への訪問説明を行っており、最近コロラドのロッキード・マーチン社へもその説明会が持たれています。

Lockheed Martin,Boeing,Northrop Gurumman,Orbital Sciences他数社が対象企業として選ばれており、(日本の石川島播磨IHIも入っているか?)基本的には現在のスペースシャトルはその全長が55.2mで宇宙飛行乗員7名と宇宙ステーシヨン建設材料や器材等の輸送が可能であったのに対して、サイズが約半分で乗員4名を乗せ特に宇宙ステーシヨンからの緊急帰還を重点の目的としてしています。

そして、要求される性能としての重要項目として、推力エンジンとしてのロケットでは今までの様に酸素タンクを積載するのでなく空中から吸入して使用するよう考えられており、より丈夫な機体構造材料として従来のアルミ・ジュラルミンに代わってグラファイト・エポキシ等が検討されています。 また、耐熱外壁としてもポリイミド・グラファイト・エポキシ等の材料で従来のような耐熱タイルを使うとしてもかなり薄い材料厚さで済むように検討されている点などが注目点となっています。
併せて、この次世代スペースシャトルでは4から6ヶ月おきに宇宙へ打ち揚げ、帰還するという運用に絶える事が要求されており、地上での次回飛行に備える整備点検にも時間を要しない事が要求されています。

一方、このスペースシャトルの予算については開発総予算で約50億ドルと見られており、現在のスペースシャトルの開発に300億ドルかけたのに比べて著しく削減されている事が特長です。
打ち揚げ用のロケットとしてはNASAでは通常の衛星打ち揚げに使用するBoeing社の Delta IV またはLockheed Martin社 のAtlas V を指名しており、打ち揚げ費用面でも大幅な削減を予定しているのが重要点です。

また、現在の国際宇宙ステーシヨンの準備が進行する中、開発期日的にも緊急性を要して、2006年までにその設計の90%を完了してテスト機による試験飛行を行える事を要求しており、2010年からその運用を開始する必要が有るとしています。 また、NASAでは現有のスペースシャトルによる運行の期限をこの2010年に定めているので、この計画は待った無しの準備計画なのだと言えます。

今回のNASAの説明に依って開発は次世代スペースシャトル一本に絞られて関係企業間での激しいNASAからの注文獲得競争が再開した訳であるが宇宙への人類の飽くなき追求は今回のコロンビア号の事故を見るにつきまだ始まったばかりなのだ、という感がさせられる最近です。

[ 以上 ]

 
 
Copyrighted to: Mike Hagiwara
Photographs copyrighted (2003, Vic Goh)
 
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