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コロラド便り(その3)

2003年1月1日
萩原 正喜
註:このコロラド便り(その3)には、郷 勝哉氏より氏が撮影されたコロラド州での写真ならびにコメントをご寄稿いただきました。併せてご覧ください。


新年明けましておめでとうございます。
皆さんご家族揃って元気に明るい希望に満ちた2003年をお迎えの事と思います。
旧年中はいろいろな出来事が有りましたが、今年も皆さんにとって益々健康で精神的にも豊かな年となる事を祈っております。
「杉の会」のWebが開設されて11月1日号の初回からこれで3回目の寄稿ですが、今年も毎月始めにアメリカの田舎のコロラドからの最近起こっている事の様子を皆さんにお伝えして行き御参考に供して頂きたいと思っておりますので、お付き合いの程よろしくお願いします。


Colorado Springsの近くで Pikes Peak と呼ばれる山の頂上の風景。標高4,301mで富士山より500m以上高く、頂上まで写真の登山電車が登っているだけでなく、車道も通じていて、ヒルクライムレースでカーキチに有名、このときも萩さんの車で行ったのですが、空気が薄いだけでなく強風で寒く、足元がふらついて長く屋外にはいられませんでした。


さて、昨年2002年はそれまで全米一の経済発展を遂げて来たコロラド州が一変して不況に転じてコロラドでの重要ハイテク産業である放送通信業界を中心に大型な従業員解雇が相次いで、私の身の回りでも失業している人達を多く見かける様になりました。
特に昨年末のユナイテット航空の会社更生法の適用申請(Chapter 11)はデンバー国際空港をハブとしているアメリカを代表する航空会社の破産保護申請だけにコロラドへの影響は大きく、飛んだクリスマス・プレゼントとなりました。
日本での経済バブル崩壊後のいろいろな経済産業界で起きた出来事と類似しアメリカでもエネルギーのエンロン社の様な史上空前の破産・不正経理・経営背任行為の発覚など、調子の良すぎた後の反動は大きなものが有って、その後連邦準備銀行の公定歩合引き下げやブッシュ政権によるホワイトハウス内での経済特別委員会の設置などアメリカ政府当局も経済回復に真剣に取り組み始めていますが、これまでアメリカのみの経済発展でヨーロッパ、アジアの各国ともその経済の停滞に苦戦して来ていますので、なかなかアメリカ経済の回復に特効薬はなく時間が今回はかかるのではないか、と言われています。

コロラド州ロッキー山脈内にはAspen やSteamboat Springsと言った高級別荘地が在って各大手有力会社の役員の顧客接待用としての山荘や別荘がかなり多く在ります。 倒産したEnron社や通信のBroadcom社などの別荘もあってその後売りに出されていますが、経済不況の進行下にあってなかなか買い手が付かない、と言った現状です。
AspenとSteamboat Springs にはそれぞれ山中にもかかわらずかなりの規模の滑走路を持った空港があって、小型旅客ジェット機の発着が可能ですのでこうした会社の自家用飛行機の発着が盛んです。 また、ユナイテット航空の傘下のUnited Expressがデンバー空港からの定期便を毎日数多く飛ばしています。
しかしながら、昨年よりの経済不況の進行に依ってこうしたリゾート地への影響も徐々に出始めており、これもコロラド州政府にとっては心配の種です。
現在コロラド州内で元気の良い産業はLockheed MartinやBoeingそしてBall Aerospaceなどに代表される宇宙産業でそれぞれNASAや各商用衛星などの打ち揚げロケット、そしてその衛星自体、更には軍事用の 偵察衛星などと、その長期な注文を多く抱えて潤っています。
しかしながら、ここでもコスト競争は厳しいものがあってLockheed Martin社では早くからその主要商品であるAtras V ロケットのメインブースター・ロケット部分はロシアからの供給を受けて使用しており、時々ロシアのモスクワにあるその製造会社からアントロポフ巨大輸送機に積まれてそのメインブースター部がデンバー空港へ空輸されてきます。 かってのソ連との冷戦時代には想像も付かなかった2国間のハイテク協調の典型です。


この赤い奇岩は萩さんの住んでいるDenver(正確にはDenver郊外のAuroraですが)から約100km南にあるColorado SpringsのGarden of the Gods と呼ばれる市立公園の写真です。
風が吹けば転がり落ちそうな岩は その名も Balanced Rock。


コロラド州の人口100年の変化:

2000年の5月に実施された全米国勢調査のデータに基ずいて国勢調査局から様々な資料が順次公表されてきているが、コロラド州の将来を予測する上で参考となる過去の100年間の人口動態調査結果が発表されている。
コロラド州の人口の基礎数字として主な項目を見ると:
2000年 /1900年
州の総人口 ------------ 4301261人 / 539700人
1平方マイル当たりの人口 ----- 41.5人 / 5.2人
自分の家を所有している比率 ----67.3% /47.2%
15才以下の人口比率* ------- 21.3% /30.5%
65才以上の人口比率** ------- 9.7% /2.5%
一人住まいの人口比率 --------- 26.3% /10.9%
住居の空き家比率 -------------- 8.3% /10.9%
市街地に住んでいる人口比率 ---- 83.9% /27.4%
等となっている。

* コロラドでは16才から通常の労働が許されている。
** アメリカでは日本で言う定年は一般的に65才である。
従って現在のコロラド州の総人口は430万人強と言う事であるが、総人口の変化にするとこの100年間で、4301261−539700=3761561人増えた事となり約8倍弱の増加をしている事になる。
コロラド州の人口変化が急速となったのは第2次世界大戦以降の1950年より後の事でそれ以前は全米50州の内でも32位から34位の人口であった。 そして、それ以降の50年での人口増加比率は全米でもネバダ州、アリゾナ州、フロリダ州、アラスカに続いて5番目の高い成長を示している。
また、特記事項として第2次大戦中に日系人達が全米の4個所にInternment Camp(捕虜収容所)と言う事で集められたが、その内の約8000名、主として西海岸からの日系人達がコロラドのキャンプへ収容された。 当時のコロラド州のKarr知事が「日系人と言えどもアメリカ人である。コロラド州の中であれば自由に活動して良い」との特別令を施行し、もともと農家出身の人達が多かった事と当時荒れ地であったが、州が無償で土地を提供したので農業開拓に従事する日系人が多かったが、戦争が終結した後もコロラドにその8000名の人達の殆どが元の場所へ帰らずコロラドに留まって今日の有名なLongmontの坂田ファームを始めとする農園をコロラドの各地で経営して地元の食料源の確保や畜産業の中心となっている事は良く知られている事である。 既に当時の日系の人達は三世・四世の時代に入っており、完全に地元に溶け込んだ存在となって来ている近況である。
ここ数年の間はコロラド州は全米でもトップクラスの経済成長をして来たので、その人口増加は著しいものがあったが2001年の後半からはコロラド州のいわゆるハイテク不況が顕著となって来たので、それ以降の人口増加はあまり増えていないものと考えられるのでこの2000年の基礎数値が現在でもほぼ通用すると言える。
また、アメリカを大まかに南部、中西部、北東部、西部の4つの地域に分けて1900年から2000年までの各年代毎の人口変化を見てみると、ワシントン、二ユーヨーク、ボストンなどの東海岸の大都市を含む地域は早くより飽和して来ていて、コロラドやカリフォルニアなどを含むいわゆる西部(West)の各州の人口増加が著しくなっている。
急速に増えたコロラドの人口の弊害として私が日本から移住した5年程前と比べると犯罪の増加、車による通勤ラッシュなどが顕著となっているが、昨年特に問題が大きくなった冬季のロッキー山脈への降雪量の少なかった事に基因する水不足で昨年夏に継続していた水の使用制限については今だに続いており、水の使用料金も沢山使うほど高価に付くといった累進料金方式に変更されている。 そして現在でも自動車の洗車に水を使う事は禁じられており、有料洗車場だけでの洗車が許されている状況である。
これらは、降雪量の少なかった事が直接の原因ではあるが、併せて急速な人口増加による水の消費量の増加が事態を難しくしている、と言われている。
現在でも各貯水池の水量は低いままになっている事から今度の冬季の降雪量が再び少ないと今年の夏は一層水不足は深刻な問題となって、延いてはコロラドの経済活動にまで影響が出る恐れがあると指摘されており、デンバーを始めとする各市の当局は今年の夏の水対策戦略を今から検討を進めている。
さて、これからの100年コロラドの人口はどのように変化して行くであろうか?


この赤い奇岩も先ほどの写真と同じく、Auroraから約100km南にあるColorado SpringsのGarden of the Gods と呼ばれる市立公園の写真です。


スキー・パラダイスのコロラド:

コロラドの冬はロッキー山脈中に点在するAspen,Vail,Steamboat Springs,WinterPark などに代表される多くのスキー場が在って、標高が高い事もあり乾燥粉雪と言う事で州内のスキーヤーを始めアメリカ各地、更にはヨーロッパ、特にイギリスからのスキー客が多く訪れるスキー天国である。
昨シーズンの降雪量の少なかったのに懲りて各スキー場ともに人口降雪機を万端配備しての今シーズンであったが早くより雪が降り更に12月18日、19日には大雪となって人口降雪機の出番が無くなっているコロラドの各スキー場である。
コロラドでの最もポピュラーなスキー場は何と言ってもVail でありデンバーより比較的近くロッキー山脈を越える国道70号線沿いに展開している多くのゲレンデとリフトそしてレストランやロッジも完備しており昨シーズンは累計で154万人のスキーヤ―が訪れているコロラドで最も多くの客を集めるスキー場である。
近年、国道70号線からは少し外れて山中へ入るが、Breckenridge と言う村が夏は避暑・ハイキング・ゴルフリゾートとして、また冬はスキー場としての新たな観光地開発を行ってきており人気を集めている。 冬のスキーヤーの訪問累計では早くもVail に次いでコロラドでは2位の147万人が記録されている。
今シーズンこのBreckenridgeに観光会社のVail Resort 社が850万ドルの投資を行って開発したPeak 9 と呼ばれるスキーコースが新しくオープンした。
今シーズンアメリカでは経済不況の影響もあって全米での新たなスキーコースの開設はこのコロラドのBreckenridgeとバーモント州のOkemoのたった2個所だけとのことである。
また、今シーズンには今まで上級者達が歩いて登るしかなかったPeak 8およびPeak 9 へも接続リフトが稼動を始めており、より広範囲なスキーコースの展開となっているので更に多くのスキーヤーが今シーズン集まるものと期待されている。
Breckenridgeの村とVail Resort 社とでは各スキーコースの麓に更にロッジとショッピング・センターの建設を計画しており、今シーズンは間に合わないものの完成するとロッキーの峰峰を一望しながら夏の観光にも良し、冬のスキーにも良い一大リゾートタウンとなると予想される。

アスペンでのスキーダウンヒル24時間耐久レース:

ロッキー山脈の西山中の高級リゾート地でスキー場としても有名なAspen スキー場でここ15年間継続しているスキーのダウンヒル24時間耐久レースが今年も12月22日(日)の正午左のコースの頂上からのスタートで行われた。
このレースはアスペンに在るSilverBell山頂から麓の町までのコース2.69マイル(4.3km)の滑走距離で標高差3267フィート( 980m)を滑降して直ちにリフトで頂上へ戻り継続してまた滑降すると言う事で24時間で何回滑り降りられるか? という「24 Hours of Aspen」と名付けられている耐久レースで今年は男性選手12名と女性選手5名が参加して行われた。各選手はアメリカを始め、アルゼンチン、カナダ、ドイツ、ポーランド、スロベニア、スイスからの代表選手たちでアメリカからはワールドカップに7回、冬季オリンピックに4回も滑降の代表選手として活躍しているCassey Puckett 選手も今回参加している。
滑降時の最高スピードは毎時99マイル(時速158km)にも達すると言う高速レースで当然コースは通常のスキーヤーは全てシャットアウトして行なわれる。
過去の最高ラップは2分10秒98で一回のダウンヒルを完了していて、最高記録は男子で83回、女子で80回が記録されている。
車の24時間耐久レースはイギリスのル・マンのレースが有名であるが、スキーによる24時間耐久レースとはコロラドならではの催しと言える。

コロラド州の来年の経済動向予測:

現在コロラド州の経済はスランプに入って一年以上が経過しているので来年どうなるか? と言う事は大変気になるところである。
毎年年末に恒例となっているコロラド大学のボールダー本校キャンパスにあるMBAを取得する為のコースであるLeeds School of Businessがいろいろな角度で検討した結果を発表する「 Colorado Business Economic Outlook Forum 」が今年もその38回目の発表が去る12月16日にデンバーのMarriott City Centerで大勢の出席者を集めて行われた。
その発表された内容からは、相対的には「ユックリではあるが着実に2003年のコロラドの経済は回復する。 特に前半6ヶ月は前進しないが後半から立ち直って来て2003年の新しい雇用創出は22300人になる。 しかしながら、今年発生したような水不足が2003年にも深刻となると経済回復の足を引っ張る大きな要因となりかねない。」といった予測となっている。
また、2003年の一人当たりの収入は2002年より4%上昇して平均年収34200ドルとなるとしており、各業種別では特にエネルギー・鉱山業、運輸・通信業、小売業、サービス業、政府関連事業の雇用伸びが期待されるとしている。
これらの調査結果は主としてコロラドのもう一方の主要産業である農業・畜産業を除いた工業・サービス関係の業種についての内容であるが、特に畜産業については今年水不足の影響もあって育てていた家畜の多くを他州へ手放さなくてはならなかったので2002年の売り上げとしては記録的な高い数字となったが、その収入はこれからの失った牧畜回復に注入しなくてはならなくなる、としている。
また、コロラド州から外国への輸出でHewlett Packard社から分社したAgilent Technologies社のコロラド事業所が主体に製造している電子計測機器や電子医療機器等を代表とするハイテク主要8品目については回復が遅れて輸出総額としては2%位いの回復に留まるだろう、としている。
コロラド州の2002年の雇用の喪失は43700名に及んだと言う事で、何とも調子の悪い2002年であったが、2003年にはこの報告以上のハイテク関連の回復を期待したいものである。

[ 以上]

 
 
Copyrighted to: Mike Hagiwara
Photographs copyrighted (2003, Vic Goh)
 
   
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