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コロラド便り(その11)

2003年9月1日
萩原 正喜/コロラド
註:このコロラド便り(その11)には、引き続き郷 勝哉氏より氏が撮影されたコロラド州周辺の州の写真ならびにコメントをご寄稿いただきましたので、萩原さんの便りとのコラボレーションで編集させていただきました。

八月後半に入ってからのコロラドはまだまだ日昼の陽射しは強いものの朝夕には早くも秋の気配を感じさせる様な気温の低下で心地良い乾燥した空気とともに過ごし易い夜となってきています。

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今回は サウスダコタ州 の バッドランズ(荒れ地)という国立公園です。

アメリカでは日本と異なり9月からが各学校や大学の新学期の始まりですがコロラドでは少し早めの8月20日頃からの新学期のスタートですので、それを目指して市場で行われてきた「Back to School Sale」と言う事で子供たち向けの特別セールも終って一段落といった感じの最近です。

一方、先にブッシュ大統領からの戦争終結宣言の出されたイラクですが、その後依然として前の体制派の散発的な自爆攻撃も含むゲリラ的なアメリカ駐留軍に対する攻撃が継続して行われており外国からのテログループの侵入も認められている中で、極く最近ではバクダッドにある国連人道支援センター本部がその攻撃の標的となったと言う事で混乱の度を高めていますが、その度にアメリカ軍兵士が次々と犠牲となっており、戦争終結宣言が出されてからの犠牲者数が戦時中の犠牲者数を既に大きく上回った、と言う事で今回のイラクの戦後統治管理の難しさを浮き彫りとしています。

コロラドスプリングスの町の郊外にある一大陸軍基地のFort Carson基地からは戦時中の派遣部隊と交代して約4200名の兵士がイラク駐留部隊の第3歩兵師団の主力として駐留しており、その人数も大勢に上る事からこれらのゲリラ攻撃による犠牲者数もコロラド出身者だけでも既に4名を数えており、その後も継続する攻撃でこれらの犠牲者の二ユースを聞かされる度に何ともたまらない気持ちにさせられます。

第3歩兵師団がイラクに根を張って占領政策を遂行させようと言うラムズフェルド国防長官が「基本的にアメリカがイラクの地に根付く方法は軍の駐留だ。」と言う事でじょうろで水を第3歩兵師団の足元に撒いているマンガが最近の地元新聞に載ってその難しさを象徴していますが、駐留している兵士たちにとっては彼等への攻撃者達が事前に特定出来ない事から何時自分に災難が降りかかるか判らず、緊張の毎日の任務と思われます。 兵士の戸惑っている顔がなんとも印象的なマンガとなっていました。

もともと多くの異なる部族の集まりからなるイラクと言う国家だけにその統治の難しさをアメリカ政府も改めて思い知らされた、と言う事かと思われます。
そんな状況の中からこの「コロラド便り」(その11)を纏めてお届けします。

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先月ご紹介した4人の大統領の顔が彫ってある マウント ラシュモアの近くの町 ラピッドシティー から州間高速道に乗り東に100kmくらい走ると、大平原の彼方にスカイラインがギザギザの山脈が見えて来ますが、この辺一帯の広大な荒れ地が国立公園に指定されています。

西ナイル脳炎の発症者でコロラド州が最大人数となった:

今年はどうなるかと早くから心配されていた西ナイル脳炎ですが、ここへ来て急激な暑さが続いた事からかコロラドでの発症者が急に増えてきて7月末現在で28名となりました。 この人数は今年ではコロラド州がアメリカ内で一番多い人数となって、州政府の公衆衛生環境局ではその対応にやっきと成っています。 感染し易いとされていた馬については早くから予防ワクチンの注射が行われていましたのであまり見かけず、代わりに人間が感染して発症するという事になってしまいました。 今後の成り行きが大変心配されています。 ちなみに同じ時点での2番目は10名のテキサス州で9名のルイジアナ州と昨年少なかった州が今年は多くなっています。 それに引き換え昨年多発したオハイオ州では今年は現在までにたった1名きり報告されていません。

西ナイル脳炎はアメリカの南方のメキシコやカリブ海諸島でのウイルスを持った蚊がそもそもの原因でそれに感染して卵を体内に持った渡り鳥が北のアメリカ各地へと運んで、その卵が夏に孵化して人間がこの蚊に刺されると発症すると言うものです。
デンバーに在る日本総領事館では昨年に続いてコロラド在留邦人向けに「西ナイル脳炎」に対する警告・注意通達をE-Mail で発信して改めて警戒を促しています。 以下はその内容からのものですが、「今夏が最も西ナイル脳炎発生の危険性が高いコロラド」と言う事を強調しています。
アメリカ東海岸から発して西の各地へと年ごとに感染が移動して来ている西ナイル脳炎ですが、昨年はアメリカ中西部で多くの感染患者が発生し、とうとうコロラド迄その感染が到達してコロラド州内でも感染者が発見されました。

この西ナイル脳炎に対する人間へのワクチンはまだ出来ていませんが、その感染経路や感染のメカニズムに関してはかなり明確となってきており、Culexと呼ばれる種類の蚊によって媒介されるので蚊に刺されない様にする事が予防の基本です。
感染が見つかってからの翌年が最も発症率が高くなる事が分かっており、3年目からは激減するのが特徴です。 その原因としてはこの蚊の卵を南方より運んでくる渡り鳥が最初の年にその地域へ運んできて蚊が卵を多く産卵するので翌年にそれらが孵化して大発生となる為で、更にその次の年にはそれらの蚊の産卵は収まり、渡り鳥には免疫が出来て蚊の卵の媒介もしなく為る事から3年目には治まるのだ、としています。

そうした意味で今年はコロラド州にとっては最も発生の危険性が高い年となり、感染すると今のところ患者の体力勝負で決定的な治療方法が無い事から特に老人、幼児、病人などの体力の無い人達を中心に蚊の活動が収まる9月下旬迄は警戒体制のコロラドのこの夏です。

「追記」 この記事を書いてから以降に最新情報として8月28日現在のコロラド州での西ナイル脳炎の感染者数の報告がColorado Departmentof Public Health & Environment(コロラド公衆衛生環境局)から発表されました。 心配していた事が現実となってしまい感染者数は累計で821人と一ヶ月の間で急上昇して、その内死亡者数は総計で10人となり、脳膜炎患者数は125人、脳炎患者数は62名と何とも大変な事態となっています。

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月や火星の表面ではと思わせる地形ですが、よく見ると山肌に横縞が走っています。 これは白亜紀(恐竜がのさばっていた時代)に海底に積もった堆積物が作った層で、その後海底が隆起し周辺の柔らかい部分が浸食により失われ、堅い部分が山となって残った結果だそうです。

安井 実 記念地域奉仕貢献者賞のノミネート:

日系アメリカ人の第2次大戦中の強制収容を含む人権侵害回復運動の推進をして来て有名となった安井 実さんはもともと弁護士でその後コロラドでの地域活動に精力的に活躍しデンバー市の都市活動局の責任者なども務めていたが、1986年に亡くなっています。 亡くなった後に同氏の残した資産と地元有志の応援を元に安井 実 基金が発足して毎年デンバー地区での奉仕活動に貢献した人に対して表彰が行われています。 対象者は日系人に限定しているわけではなくデンバー地区の住民であれば誰でも推薦対象となりその対象者は同時に地元新聞のRocky Mountain News 紙の創始者のJefferson賞の選考対象者となる事になっています。

これは誰かが地元への奉仕活動に活躍したしたと思われる人を推薦して選考の結果受賞者が決定される仕組みで、今年の推薦応募の募集広告が地元新聞の一ページを使って告知されました。
この様にコロラドでの日系人の人達は既に3世から4世の時代に入って地元へすっかり融け込んでいる中でこうした後々まで日系人のアイデンテイテーの残る仕組みを残していっているのもなかなか偉大な事と感じさせられます。

デンバーでのワイン大試飲会:

デンバー地区のワイン業者と高級レストランとが主催して毎年開催しているワインの展示・試飲会である「Wine for Life」が今年もプロバスケットボールのデンバーナゲッツとプロアイスホッケイのコロラドアバランチェのホームグラウンドとなっているペプシセンターの一階にあるUniversal Lending Pavilionを会場として8月10日(日)に開かれました。 早くからその宣伝広告が地元新聞に載って、入場料は前売りが40ドルで当日売りが50ドルとなっていますが、コロラド産を含む300種類以上のワインが参加者の試飲用として準備されていて、アペタイザー等も市内の高級レストランから提供されてたっぷりと楽しめる嗜好となっている、と観客集めに務めています。

今年はコロラド大学のガンセンターの参加もあり「ワインを飲んでガンにかからないLifeをエンジョイしよう」と言うテーマでの開催となっています。 アメリカ人の3人に一人は皮膚ガン等を含め何らかのガンの治療を受けている、とされており、統計的にワインを日常呑んでいる人はガンにかかり難く、ガンになった人もワインを飲んでいればその進行が遅くなる、とされているのだ、と言う事を強調しています。
うまいワインを嗜んで併せてガンからも逃れられるとなれば文字通り一石二鳥と言う事でしょうか。

日本の輸入牛肉への関税引き上げで困惑するコロラドの畜産業者:

アメリカからの牛肉の輸出量は日本向けがトップで昨年には年間7.84億ポンド(39.2万トン)が日本へ輸出されて来ています。 あの焼き肉天国の韓国向けよりも多く、また狂牛病騒ぎで通常より35%日本への輸出減っている中での日本へのこの輸出量であるから、日本はアメリカの畜産業界にとっては最大の大変良いお得意客となっています。
そんな中でこの8月から日本での冷凍肉の輸入関税が従来の38.5%から新たに50%へと引き上げられています。

この措置に対して、デンバーの南に接しているCentennial 市に本部を持つNational Cattlemen's Beef Association(全米牛肉畜産業者協会)では一年前から日本でのこの関税引き下げの為のロビーイング活動を展開してきていたのが、全く反対の結果となって今回の日本政府での実施に頭を抱えています。
コロラドではその広大な土地を利用して牛肉用の牛を育てる牧畜業に約15000名が従事しており、飼育されている牛の頭数は総計320万頭に及び、その規模で全米では10番目の州となっています。 そしてコロラド州全体の農業畜産業の収入の55%が牛肉の収入で占められています。

過去アメリカから日本への冷凍牛肉の輸出は1998年に11.8億ポンド(53.6万トン)の最高記録を示しましたが、その後伸び悩んでいたところへ狂牛病問題やその後に生じた生産地表示異表示問題等で日本での消費者の牛肉に対する信頼が急激に低下して、アメリカ産の牛肉は大丈夫なのだといったキャンペーンを日本で精力的に行なったりして来ましたが、そのあおりを受けて大幅輸出低下となってきています。 そうした環境の中で今回の日本政府の牛肉輸入関税の大幅引き上げでNCBAとしてはお手上げの状態となっている訳です。

コロラドの牛肉は「 Corn Fed Beef 」と言ってトウモロコシで育てた牛なので脂身が少なくステーキにすると美味しいのだ、と言う事になっています。 デンバーには日本の 日本畜産協会の事務所も置かれていて牛肉の日本への輸入だけでなく、良質肉の牛の日本での交配のために生きたままでの輸入なども過去盛んに行われたが、ストップしている現状です。

今回の日本政府の冷凍牛肉の輸入関税アップの処置は来年の3月末までの臨時措置ではあるもののNCBAでは折角日本での牛肉消費が高まってきたのに今回の輸入関税の大幅引き上げは日本国内の畜産業者の保護が主目的であっても結局消費者への高い牛肉を押し付ける事となり消費マインドを冷やしてしまう事と為るのではないか、と心配しています。
過去同様な事は10年前の米の不作の年にその輸入をめぐっても起こっているが、結局日本の消費者はササニシキやコシヒカリを価格が高くても選択した様であるが、牛肉では神戸牛や松阪牛の霜降り肉を一般消費者が価格が高くても選択するだろうか?

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お城の城壁のような山が行く手を遮っています。

ユニークな前後配置の双発エンジン軽飛行機の製造に入ったAdams Aircraft 社:

先のこのレポートで紹介したデンバーの南に在るCentenial 空港に本社を置く胴体の前後にエンジンとプロペラを配置したユニークな形態のA-500型双発軽飛行機の開発を進めて来たAdams Aircraft 社はその機体の連邦航空局の認証テストも合格しデンバーの南のEnglewoodとコロラド州の南の町Puebloに製造拠点を設けてその本格的な生産に入っています。
同社での次のモデルとして計画していた、このA-500型の基本設計を活かした双発ジェット軽飛行機のA-700型の準備も着々と進行して7月27日(日)にその初号機が完成して初の飛行をCentenial 空港で行ないました。

A-700型はA-500型の主翼及び双胴の尾翼部など多くの部品の共用をしており、胴体が6座席から10座席に増えて前後に長くなり、胴体の後尾に左右双発のジェットエンジンが取り付いていると言う形態でA-500に無理矢理ジェットエンジンを積んだ、と言う感じもするが、より多くの乗客を乗せてより高速に飛行出来るバージョンと言ったものとなっています。

プロペラ版のA-500型は価格が93.5万ドルですが、このジェット版のA-700型は190万ドルとほぼ2倍となっていて2004年後半から納入開始の予定となっています。
同社は既に第2回目の追加増資を完了しており、コロラドでのベンチャー企業の成功例と成る可能性が大となって来ており、アメリカならではのベンチャー企業のお話です。

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城壁の一部には見張り台もあります。

新型旅客機の尾翼がデンバー空港の歩行者用橋にぶつかりそう:

先のレポートで紹介したエアバス社のA-319型の胴体を少し短くして整備などを含む運行の経済性を高めた新型機であるA-318型の初号機がパリの航空ショーに展示された後いよいよデンバー空港をハブとしているフロンテイア航空へ配備されました。
このA-318型機は一機が4500万ドルするフロンテイア航空が現在主力に使用しているA-319を8フィート(2.4m)短くして座席数もその分減らし、エンジンや電気系統に改良を加えて運行・保守の経済性を高めたもので低航空運賃を売り物にしてきたフロンテイア航空としてはこれからのコスト力を付けるための目玉となる機種としています。
ところが、ここへ来て問題が発生しています。

デンバー国際空港はフロンテイア航空が主体に使用しているAコンコースとメインターミナルとの間には歩行者が渡る非常に長いスパンの歩道橋がかけられていて地下の電車を利用せずに自ら歩いてでもゲートへ行く事が出来るようになっています。
この歩道橋はその下をA-319の様な中型機は従来より通行しており何も問題が無く運用していました。 ところが、今度A-318型機が来て調べてみると尾翼の高さが少し高く出来ており、通行時にブッかる心配が有ることが今回判り問題提起されています。

今更、何を言っているのか! と言った感じの事であるが、元々この歩道橋は地上からの高さが40フィート(12m)より高いものは通行出来ない、という操縦士への説明になっているが、現実にデンバー空港が開港した翌年1996年3月1日にアメリカウエスト航空のボーイング757型機がその下を通過して尾翼の先端で橋の下面をこすった実績があり、要注意の場所となっています。
エアーバス社の規格ではA-318型機の尾翼の高さは41フィート2インチとなっており、一方、購入者であるフロンテイア航空では42フィート6インチ有りそうだ、と言っており、更にデンバー空港当局が知らされている情報では同機は42フィート3インチとなっている、としています。

何とも訳の判らない話であるが、エアバス社ではメートル法で設計しているが、その換算誤りなのか、それとも空の時の高さと満席の時の高さの差なのか? 更に離陸時には航空機は前輪を高い位置にセットして離陸するがそうすると尾翼部が下がって少し低くなるように為っているのが原因か?など、どうもハッキリしない。
そこで、実際にA-318を下へ持って行って調べる事となり、併せて空港当局ではレーザーを使う測量器で正確な高さの測定を行なう事となった、と言う顛末です。
橋は当然少し上向きに反ったアーチ型の下面となっており、中央の方が空間が大きくなっているが、あまりスレスレだとたまたま運悪く小錦が中央を歩いていた時に飛行機が通過すると擦ってしまう事となりかねない。 と言った最新ハイテク機と最新空港の笑うに笑えないお話となっています。

フロンテイア航空では現在A-319型機19機を使って運行を行っていますが、今後更にこのA-318型機を6機購入する事となっており、取りあえずこの新型機はAコンコースの北側のゲートのみを使う事にしているが、南側のゲートを使用するように成るとこの歩道橋の下を通過出来ないと反対側を大回りしなくてはならなくなり大変不便な事となるので深刻な問題です。
計測データが集まったところでこの下を通って良いか否かはFAA(連邦航空局)が決定を下す事となっています。

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ナイフエッジのように薄く鋭い山稜は、近寄るとざらざらの砂で出来ているように見え、一寸押しただけで崩れ落ちそうなのですが、実際は前述のように雨風に耐えて残った堅い部分なので、蹴飛ばしてもびくともしません。

カナダの石油会社がデンバーにアメリカ本社を設置:

コロラドのガソリン・灯油・天然ガスなどの石油資源は主としてパイプラインで南のテキサス州Dumasの町から送られてくるものと、やはりパイプラインで延々北のカナダのアルバータ州から送られて来るものをデンバーの町の北に隣接している工業地帯CommerceCity の精製工場で精製して各用途別に配送販売されています。 この精製施設では一日6万バレルの精製能力を有しておりデンバー空港へのジェット燃料もここから供給されており、デンバー市が運営する市内バスの燃料や広大な畑の中の一軒家などで不可欠なプロパンガスなどもここから供給しています。

今回FTC(公正取引き委員会)の認可が下りてCommerceCityの石油精製工場をカナダの石油会社の大手Suncor Energy社がそれまで所有運営していた大手のConocoPhilips 社からその関連するコロラド内のガソリンスタンドも含めて1.5億ドルで買収する事となりました。 併せて、Suncor社ではそのアメリカでの活動の本社機構をデンバーに開設しました。

同社では今後2006年までに2億ドル程の投資をしてこの石油精製工場の施設改良と能力拡大を準備するとしています。
この事はカナダ企業のSuncor社としては最初のアメリカでの事業進出となるが、今までにも既にもう一社のカナダ最大の天然ガス会社のEnCana Oil & Gas 社も2年前からそのアメリカ本社をデンバーに構えており、もともとデンバーはカナダ資本の進出の盛んな地域ではありますが、今度のSuncor社のデンバー進出を地元では地元活動の活性化になると歓迎しています。

ConocoPhilips社はテキサス州ヒューストンに本社を置くアメリカで3番目に大きな石油会社であるが、昨年8月にそれぞれ石油のメジャーであったConoco社とPhilips 社とが合併して出来た会社で、かねてよりCommerce City の石油精製施設の売却を公表していました。

このSuncor社はカナダのアルバータ州でのオイルサンドからの合成石油の事業も大きく手がけており、今回買収の精製施設を使って2006年までには全体の80%の精製を行なう事にしたいとしています。 現在のオイルサンドからの同社の石油は一日25.5万バレルであるがこの消費ルートの買収確保で今後2012年迄には55万バレルまで引き上げる計画で有るとしています。
その内にデンバー地区を走っている自動車の殆どがオイルサンドからのガソリンで走っている事になっているかもしれない、と思わせられる二ユースです。

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お城の望楼?の上に月が出ています。

天然資源に恵まれたアラスカの基礎数字:

コロラドの話ではありませんが石油関連での他州のお話しを参考までに。
アラスカ州では33000人の人達がアラスカン・キング・クラブや鮭や数の子を始めとするシーフード産業に従事していてアラスカ州では最大の産業となっています。 日本もこれらの産品の最も上得意となっている訳ですが、一方、石油や天然ガスの採掘産業にはアラスカ州のたった8400名が従事しているが、金額面ではアラスカ州の全体の収入の85%を稼ぎ出しています。

先月アメリカの上院を新エネルギー法案が通過しましたが、下院での通過結果と異なり大きな埋蔵量が確認されているアラスカの自然保護区域での石油・天然ガスの採掘には禁止が折り込まれている結果となっています。 ブッシュ大統領は声明を発して両院での統一調整を至急計るよう要請していますが環境の保護か? エネルギーの確保か? と言った新たな葛藤となっています。

ケーブルTVのComcast 社の最近の郵送広告から。

昨年11月にAT&T Broadband 社を買収したComcastの最近各家へ郵便で送付して来た広告では、かってのAT&T Broadbandの時と同様に衛星TV放送との競合を正面に出している戦略は変っていません。 「衛星放送の視聴者の人達へ! ComcastのケーブルTVに切り替えてくれたら400ドル相当のおまけを付けます。」 と言った内容です。 400ドルのおまけの内容は毎月の視聴料金から25ドルずつ継続して16ヶ月間毎月の勘定書きから割り引く、と言うオファーになっています。

また、8月からネットワーク・チャンネルの各ローカルTV放送のプログラムをHDTVで放送するサービスを開始します。 これを受信する為には視聴者はHDTV本体、コンバーター、リモコンなどのたの必要な付属機器などは自分で準備する事が必要です。 月毎に受信装置の賃貸料が必要です。
但し、そのHDTVチャンネルは絶えず常にHDTVで放送しているわけでは有りません。 そして、HDTVプログラムはComcast のフォーマットに準拠したプログラミング供給会社の場合のみ有効です。と、しています。

フォルクスワーゲンのカブト虫が製造打ち切りとなる:

多分、この二ユースは日本でも大きく伝えられた事と思いますが、こちらの地元新聞でも紙面2面を割いて特別記事として載せています。
ドイツの大衆車フォルクスワーゲン社の俗称カブト虫のその長い歴史の記事も併せて掲載されており、 1935年にあのスポーツカーで有名なポルシェ博士が設計してプロトタイプを作製したのが始まりと言う事で私が生まれるより前のスタートと為っているようです。 それ以降その基本設計コンセプトを変えずにズーと守り通して来た事も偉大ですが、一旦製造中止が同社で決心されたにもかかわらず世界の多くの愛好家から支持されてここまで継続生産されてきた事も重要な意味を持つと感じます。

めまぐるしく変化する新型モデルの世の中で一つの異なるコンセプトとしてのビジネス研究の好対象となるに相応しい歴史であると言えそうです。
現在、コロラドでも設計を一新した新型の2世ビートルが町中を多く走りまわっている様になったが、この新型も含めてこのビートルはメキシコの首府メキシコシテイから約100km南東に下ったPuebla の町に在るフォルクスワーゲンの工場でこの旧車種専任の約300名の従業員によって今まで生産されて来ていました。

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打ち寄せる波のような山また山の連続です。

7月30日(水)にその最終車が同工場から出荷されて、その累計総生産台数は:

21、529、464台となって、この最後のベビーブルーカラーの車はフォルクスワーゲンの本社のあるWolfsburgの町へと運ばれてその博物館へ展示される事となっています。
メキシコのPuebla の町はメキシコがかってフランス軍との戦闘で勝利して独立を勝ち取った記念すべき古戦場として有名で、毎年この独立記念を5月5日にCinco de Mayo としてメキシコのみならずコロラドでのメキシコ系の人達の記念行事となっています。

今回の新聞での記事を読んで意外だと思ったのは、第2次世界大戦前には戦時中であった事も手伝ってこのカブトムシはたったの210台きり生産されなかった事で、終戦後になって完全に連合軍の空爆によって破壊されたWolfsburgのフォルクスワーゲンの工場を連合国が支援して建て直して、1946年には既に10020台の生産を達成した、と言う事から如何にこのフォルクスワーゲンのカブトムシがドイツの戦後復興に寄与したかは想像にあまりあるところです。

その他、歴史的には1955年に100万台達成、1972年には一モデルでの生産最高記録を持っていたフォードのTモデルの記録15、007、034台を越えている、としています。
1991年2000万台を達成、そして今年最後の21529464号機が出荷された訳です。 その間1970年台の後半にはアメリカでは排気ガス規制値に合格出来ず、販売が停滞してしまったと言った事態が生じましたが、それでもフォルクスワーゲン社からの純正補修部品の潤沢な供給が有った為に多くのビートルが町中を走り続けた、と言う経過もありました。

今度の公式製造停止の発表とともにその交換部品についてもフォルクスワーゲン社では併せて停止すると言っていますが、既にサービス部品は他の供給メーカーが存在するし、廃車から外した部品の取り引きなどもルート化しているので、今後も従来とあまり変化無く走り続けるに違いない、と言った記事になっています。

私自身はJVCがアメリカ現地法人を設立時に各事業所からの商品技術サポート要員の一員としてニユーヨークへ2年半駐在した経験がありますが、その時にビートルではなかったがフォルクスワーゲンのマイクロバスのかなり古い中古品を個人で購入して使っていました。 当時マニアル・トランスミッシヨンの車は日本では当たり前であったがアメリカでは珍しく盗難に遭い難く、なおマイクロバスであればマンハッタンの駐車禁止区域でも駐車違反の反則切符を付けられる、と言う事が業務用と言う事で大目に見られて無かったのがその理由なのですが、日本から見えられた人には「このもの好きな変わり者が」と言われましたが、2年間ほど実に良く走った後、遂にエンジンのシリンダーヘッドを固定している太いボルトの一本が折れてバクバクとなり修理も諦め廃車としたのも今となっては大変懐かしい思い出です。

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場所によっては全く違った色の地形が見られます。

DVDレンタルのNetflix 社が利益:

インターネットによりそのカタログから希望のDVD映画を検索して注文し、郵便で配送されて来たデイスクの鑑賞が終えた後は郵便で返却するユニークなシステムで事業展開しているNetflix 社ではその後新たに32.7万人の新規会員を獲得して総会員数は114万人となって大きな成長を遂げています。

最近同社は4月から6月の第2四半期の決算を発表して、株主配当を差し引いた純利益500万ドルを上げた、と発表しました。
同社では今までDVD在庫全体の65%をリース仕入れで回して来たが、現在では60%と下がって来ており、その殆どが新譜のプログラムとなっている、としており今後同社のリース支払い金額が減少してレンタル収入は更に増加するものと予想されています。
同社では今年の年末商戦期には新たなマーケテイング戦略を展開する事にしており、現在、BestBuy店やCircuitCity店などでの新規会員の獲得登録手数料として一名当たり30ドルを支払っているが、今年末からは35ドル支払うようにすると言っています。
同社では、当初2003年での会員数の増加は当初20%くらいと予測していたが、それをはるかに上回る増加に依り純益の増加で非常に大きな成果を上げている、としています。

現在競合するシステムとして同社の方法を模倣したWalMartが行っている同様なDVDレンタルシステムがあるが、むしろそれによって一般の人達へのNetflix の存在の知られるところとなって会員増加につながっているのだ、としています。
同社の将来の目標として2007年から2009年迄には10億ドルの売り上げを上げ、総会員数は500万人とする事を掲げており、その時の同社の手持ちキャッシュフローは1億から2億ドルとしたいとしている。 なかなか壮大な目標計画であるがアメリカでの郵便の仕組みや新しいビデオ・メデイアのDVDを活用して同社が考案し事業化した方法は正しい道を歩んでいるようです。

NASAの火星地表探査ロッキードマーチンの探査機で再挑戦:

今年8月下旬には6万年ぶりに火星が地球への大接近をすると言う事で世の中の関心を集めていますが、1999年の12月に火星の表面迄到達しながら着地に失敗して水泡に帰してしまったNASAの火星の地表への氷(水)の存在を確認し、更には生物の存在を確認するための火星地表探査計画が再び再挑戦される事となって、その宇宙船と地表探査機を含めてロッキードマーチン社のコロラド事業所の製作によりアリゾナ大学のLunar & Planetary 研究所と同社とが指揮をとって2007年に再挑戦する事が二ユースとして8月4日にNASAより発表されました。

これは先の2001年にロッキードマーチン社の打ち揚げた周回宇宙船で火星探査を行なったMars Odysseyの探査結果に依って火星の極地には氷が存在する事がかなり明確となった事を受けての次ステップの計画であり、打ち揚げロケットにはボーイング社のDelta II が使用される予定で火星への到着は翌年の2008年となる計画です。
計画では火星の極地に着地した後、地表探査機からロボット腕を伸ばして地表3フィート(90cm)くらいの深さまで掘ってその土砂を取り込み分析して地球へとその分析結果データを送信する、と言うものとなっています。

前回は火星の地表へ着地した事は確かであるが、着地前にスプリング・アクシヨンでその脚が開くようになっていたメカニズムが、その開放時のショックでコンピュータのセンサーが動作してそのエンジンを止めてしまった為に後は何も為すすべが無くなってしまったもので、今回はこの前回の失敗を教訓にいろいろな角度からの検討が行なわれて改良される事となっている。

一度燃え尽きて灰となっても再びよみがえった不死鳥フェニックスと今回の計画実行の中心となるアリゾナ大学のの在るアリゾナ州の首府Phoenix とをかけてPhoenix Mars Probe 計画と名付けられており、今までにその地表探査機のテストモデルを使ってカリフォルニア州のDeath Valley で実際の作業実験が繰り返し行なわれて来ています。
このためのNASAの総計画予算は3億2500万ドルの契約で、その内訳はアリゾナ大学へ約5000万ドル、打ち揚げロケット対応のボーイング社ヘおおよそ1億ドル、そして残りの約1億7500万ドルがロッキードマーチン社および何社かの小規模な参画会社とで分け合う事となっています。

アリゾナ大学では「もし我々が火星地表での有機物に富んだ、化学的に活性な層が発見出来ればそこには生物の存在を裏付ける事となり、たとえ今回生物そのものが発見出来なくともこの計画実行で将来の探査研究の方向を確認する事が出来るだろう」とその取り組みに意気込んでいます。

コロラドのロッキードマーチン社では前回この1999年の不成功が有ってから2回の同社Titan ロケットの打ち揚げ時の爆発事故が発生して信用を失った事から同社の商用衛星打ち揚げ事業にも大きな打撃を受けて2001年までの業績低迷の原因となり、やっとここ18ヶ月間での各種実績を積んで信頼回復を取り戻して来た事から、今回は絶対に成功させなくてはならないとの決意で取り組む事となります。
日本やヨーロッパでも既に同様な火星観測ロケットの打ち揚げが行われていますが、火星への探査は今後業界での競争も激しくなりビジネスとしても盛んとなる文字通りのStarWarsが感じられます。

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遙か彼方の地平線に日が沈みました。

USB接続携帯用フラッシュメモリーの普及:

今や当たり前となったUSBポートを持つパソコンの普及により、こうしたUSBポートへ接続して使用するフラッシュメモリーの携帯用のパッケージがポピュラーとなってきて、コロラドでもパソコンショップはもとよりAVショップなどでもその売り場へ多くのモデルが展示販売される様になっています。
地元新聞にもこうした特集記事が載るようになって、これからますます普及して行く気配となっています。

容量的には256Mバイト前後のものが多くを占め、価格は130ドルから150ドルとまだまだコスト/容量的には高く付くもののその携帯性や小型にしては大容量、と言う事でもはやフロッピーを使う人は居なくなると思える程の勢いとなっています。
用途としては特に個人的には音楽や写真のデーター取り込み用が多く、仕事ではプレゼンテーシヨンの原稿を入れて持って行く等の目的が現在のところ主体となっていますが、当然、パソコンだけでなく、このフラッシュメモリーにパソコンで編集記録したものを接続して使用する、例えばUSBフラッシュメモリー・ウオークマンの様なものや、これを差し込むと直接プレゼンテーシヨンが可能なプロジェクターも出て来ています。

大きい容量のものでは2Gバイトで445ドル売りのものも出てきている、との事ですが、256Mバイトでもう少し価格が下がれば申し分ない、と言った感じとなっている最近の事情です。

HDD用薄膜ヘッドの名門Read-Rite社の資産をWesternDigital社が買収:

かってのHDD用の薄膜デイスクメデイアと薄膜ヘッドの先端開発事業化で有名であったRead-Rite 社はその経営不振から会社更正法の適用を受けていたが、遂に更正を諦めその資産の全てを売却する事に決心して破産裁判所もそれを認可する事になっています。

買い取り主としては現在HDDの主力メーカーであるWesternDigital 社が同社の全ての資産を一括して約9450万ドルで、また同社のタイの製造工場を約6200万ドルで買い取る事で名乗りを上げており、10日以内に他に買い取る人が出なければWesternDigital 社への売却が決定する事態となっています。 なかなか厳しい生き残り競争のHDD業界ではありますが、一方でHDD用薄膜ヘッドの売り上げ好調で好決算を最近行なった日本のTDK社の話などを聞くと、何か技術と生産に裏付けされた営業活動のしたたかさがものを言っている様に感じる最近です。

写真

バッドランズ国立公園の近くの ウオール という町のウオールドラグストア。
写真の一番奥までが一軒の店で、間口の広さでは恐らく全米一でしょう。
ドラグストアと称していますが、中はおみやげ物屋やレストラン、衣料品などを売っているショッピングセンターです。

コロラド州知事とデンバー市長とが揃ってシリコンバレーへ事業誘致訪問:

Bill Owensコロラド州知事とデンバー市長に最近なったJohn Hickenlooper 氏とは一緒に8月5日(火)の早朝一番の飛行機でデンバー空港を発ってサンノゼ空港へ向いました。
その目的は、法律事務所がアレンジしたシリコンバレーのベンチャーキャピタルの代表者を集めた朝食会に出席して挨拶しコロラドへの各社の事業進出を促す投資促進を目的としており、その後にはカリフォルニアに本社を持ちコロラドで事業展開している主要ハイテク会社や今回コンピューター・ビジネスソフトのJ.D.Edwards社を買収する事が決まったPeopleSoft社の役員などを訪問してコロラドへの事業拡大の要請を行なったものです。

二人ともにコロラド大学の卒業生であり、コロラド大学の在るボールダーやデンバー地区が如何に事業や住むのに良い環境かを訴えたのが印象的であったのですが、一方、コロラドと同様にハイテク不況と大型解雇に悩むカリフォルニア州の州知事のGray Davis 氏は今年11月に行われるカリフォルニア州知事の改選選挙に再出馬する意志表明を同じ8月5日にWest Los AngelesのWorld Savings 銀行ビルのホールでの演説を行っていた中で、今回のコロラド州知事とデンバー市長のシリコンバレー訪問について出席していた記者より質問されたが、終ってから同知事のスポークスマンを通して「彼等は基本的には訪問して我々の仕事を奪いに来たのだ。」と言った厳しい応答をしている。 その位いカリフォルニアとコロラドの両方の州でのハイテク不況の影響は大きい、と言う事を伺わせるものとなっています。

共和党のOwens 知事と民主党のHickenlooper知事とはデンバー空港を明け方前に飛び立つ前に記者団に向って声明を読み上げ、「コロラドにとって良い事はデンバーに良いし、デンバーにとって良い事はコロラドに良い事だ。」と協調体制でこの経済困難を乗り切る覚悟を披露しています。

今回の2日間のシリコンバレー訪問の間に同地区の各社の責任者総計75名との打ち合わせを持っており特に初日の火曜日には2人は朝の3時に起きて5時半からのデンバー空港での記者会見に臨んだ後、SanJose空港へ到着後夜の11時までの過密スケジュールを精力的にこなし、 特にOwens 知事はコロラドのQuality of Life について、年間に300日の日照日、全米2番目の高学歴労働力、54に及ぶ標高14000フィート(4200m)以上の山々、全米で4番目に低い課税率などのコロラドの住むのに良好な環境を訴えてコロラド企業への投資や事業進出についての検討を各社の役員たちへ訴えました。

現在カリフォルニア州ではその多額な財政赤字の責任追及で知事のリコールを含めて改選投票の選挙戦が俳優のシュワルツネッガー氏を含めて200人以上の候補者の乱立下で展開されていますが、ハイテク不況の継続しているカリフォルニアとコロラドの各企業への競合アプローチは今後も激しさを伴って継続しそうです。

第5回の「杉の会」の会合の9月27日(土)開催案内を幹事より頂きました。
今まで私自身は第3回に参加する事が出来ましたが、昨年は日程が合わず欠席しておりますので、今年は是非出席して皆さんの元気なお顔に接したいと思っていましたが、真に残念ながらこのタイミングに日本へ行けそうに有りません。 日頃のご無沙汰のお詫びとしてこの「コロラド便り」でアメリカの田舎の事情を皆さんへの話の種に今後も継続投稿させて頂きたいと思っておりますので今後ともよろしくお願いします。
皆さんの今度の「杉の会」会合に一人でも多くの方が出席されて元気で楽しい歓談の一時が過ごされる事を祈っております。


[以上]

 
 
Copyrighted to: Mike Hagiwara
Photographs copyrighted (2003, Vic Goh)
 
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